表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第9話 ラスト・ダンジョン
90/92

87-a.またね


 ・前回ぜんかい(86.『あるべき所』)のあらすじです。

魔王まおうたおしたユノが、セレンにもとの世界への帰還きかんか、異世界にのこるかの選択せんたくをせまられる』




 提示ていじされた選択肢にユノは逡巡(しゅんじゅん)した。

 もとの世界に未練(みれん)はある。両親(りょうしん)は自分の死をなげいているかもしれない。


(それでも……)

 こころの内でユノは決めた。

 セレンに(なお)る。


「あの、セレンさん」

「はい」

「ボク、この世界にのこります」


 あっさりとセレンは承諾(しょうだく)した。

 霊樹(れいじゅ)(つえ)でトンとゆかを突き、光る文字(もじ)()ぶ。

 その言葉(ことば)は、ユノに()()()()()()


 だが輝くつづりはひどくなつかしく、自分の半身(はんしん)のように()かちがたい思慕(しぼ)を感じさせた。


 妖精ようせい(てのひら)に文字は(おど)る。

 彼女かのじょはグシャリとそれを潰した。ひかりが砕ける。


「では、ユノ(さま)


 みずけられたものの、ユノは返事ができなかった。

 なにかおおきな、取り返しのつかないことをしたような後悔(こうかい)が、心臓(しんぞう)圧迫(あっぱく)する。


人間にんげんの国……【ペンドラゴン】の()に戻るのでしたら、お急ぎください。ここは魔界(まかい)です。魔王(まおう)なきいま境界(きょうかい)をくずす(すべ)は消え、ほどなく堅固(けんご)な仕切りが(きず)かれるでしょう」

「え……でも、パペルの(とう)は? あそこは交通路(こうつうろ)なんじゃあ……」

「そうですが、魔界とはつながっていません。本来ほんらいなら」


 ユノはぎょっとした。


 ごごご……。


 しろがうなりはじめる。

 魔王まおうのちからが形作(かたちづく)った妖術(ようじゅつ)王城(おうじょう)は、その根源をうしない、(くず)ちようとしている。


「えっと、じゃあ……あ、セレンさんが(はこ)んでいってくれるんですか?」

「できないこともありませんが、」

 霊樹れいじゅの杖をセレンはた。

妖精(ようせい)通路(つうろ)を人間がとおるのはどうかと……」

「『どうかと』って? どうなるんですか?」

くて廃人(はいじん)最悪さいあく場合ばあい、からだの表面(ひょうめん)内側(うちがわ)がひっくりかえった状態(じょうたい)で出てきます」

「どっちもすくいようがないじゃないですか……」


 がっくりとしてユノは涙目(なみだめ)になった。


 広間ひろまにある『虚無(きょむ)』をセレンがあごでしゃくる。

 ディアボロスの死に(さい)し、誕生(たんじょう)した、暗黒あんこくうずである。


強大きょうだい魔力(まりょく)を持つ核石(ジェム)が、肉体(うつわ)うしなったことで解放かいほうされ、できた()()()です。あれに飛び込んでください」

「だ、大丈夫だいじょうぶなんですか?」

原理(げんり)はテレポートのジェムと似たものです。だいたいユノさま、あなたはここに来るとき、どうやって来たのか考えてみなさい」


 そう――ユノはアルゴルという、塔にいたダークエルフの魔石ませきを使って魔界まかいに来た。


 ごくり。


 息をむ。

 うずかう。


「時にユノ様。私がこんなことを言うのもなんですが……」


 ()ひびきがつよくなり、かろうじて無事だったはしらたおれる。

 落下物(らっかぶつ)が、異界(いかい)英雄えいゆうたちの石像を完膚(かんぷ)なきまでに打ちくずす。


「よかったのですか? あなたの故郷(こきょう)に帰らなくて。この世界に(とど)まったところで、人間は……」


 しずかにユノはあしを止めた。

 セレンをる。

 小さく笑う。


「『またね』って、言ってくれた人がいるんです」


 くろうずに飛び込む。

 くらがりの(ふち)がユノをみ込む。

 魔法(まほう)のちからが、少年しょうねんはこんでいく。


 王都(おうと)――ペンドラゴンへ。





                 〈おわり〉





 ・以上いじょうをもちまして、『【異世界いせかい転移てんい】をやってみた』のメインストーリーは終了しゅうりょうです。

 ・つぎの投稿とうこうは、説明せつめいようのストーリーになります。(内容ないようは『完結のおしらせ』や、『修正しゅうせい予定よていについて』などです。



 んでいただいて、ありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ