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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第9話 ラスト・ダンジョン
81/92

79.石像


 ・前回のあらすじです。

魔王まおうを倒したあとの世界のことをユノが知る』



 ・・・・・・


 ユノは階段をのぼった。


 玉座(ぎょくざ)()おおきく、さながら教会堂(きょうかいどう)のよう。

 なが身廊(しんろう)が光のない彼方(あなた)び、はしらたいまつ(トーチ)が点々と側廊(そくろう)におぼろな(あお)とす。


 セレンとは階下(かいか)で別れた。霊樹(れいじゅ)(つえ)を振って、彼女は城から離脱(りだつ)したのだった。

妖精(ようせい)の時代が来る、か) 

 カルブリヌスをかまえ、ユノはそろそろとあるいた。

 視界(しかい)わるい通路に、ぽつぽつと美術品(びじゅつひん)が立っている。


 足元あしもとには、風化(ふうか)のためかモンスターのあばれたためか、石の断片(だんぺん)が散らばっている。


(セレンさんみたいなのばっかな()なかも、考えものって気がするけど)


 ――とんっ。


 ぬっと暗闇(くらやみ)からあらわれた物体にユノは肩をぶつけた。

 たおれそうになったソレをあわてて支え、立てなおす。

 たいした物音(ものおと)がしなかったことにユノは安堵(あんど)した。


 ぶつかったのは石像(せきぞう)だった。

 人を(かたど)った――左肩(ひだりかた)から右胸(みぎむね)までを、袈裟(けさ)がけにくした彫刻(ちょうこく)


(あれ? この像……)


 ユノは中腰(ちゅうごし)になって(あらた)めた。

 石の右腕(みぎうで)()める。


(やっぱり、これ左きき(サウスポー)だ! 良いなあ~、あこがれたなあ~)

 うらやましがりながら先へすすむ。

 胸のつっかえはとれた。

 像の右腕みぎうで時計(とけい)()いてあったのが気になったのだ。


(――時計?)

 ()ぶようにしてユノは石像に()けもどった。


 (よろい)脚絆(きゃはん)をまとった戦士の(ぞう)おとこおんな判別(はんべつ)不明ふめいの右腕――その手首(てくび)には、アナログタイプの腕時計(うでどけい)がついている。


(これ……有名ゆうめい会社(かいしゃ)のだ。ボクでも知ってる……)


 あおい光にさらされた石の文字盤(もじばん)には、製造(せいぞう)会社(がいしゃ)名前なまえがあった。

 学生(がくせい)にはすこ背伸(せの)びした価格(かかく)の、カジュアルブランド。


 こみあげる悲鳴ひめいをユノは口元(くちもと)を隠すことでし殺した。


 あたりをまわす。

 素通(すどお)りしてきた石像を確かめる。


(スマートフォン……ゲームキャラのキーホルダー、オーディオデバイス……?)


 上半身(じょうはんしん)だけになった軽装(けいそう)の戦士の、(むね)ポケットからのぞく端末(たんまつ)のカメラ。

 下半分(したはんぶん)だけがのこった――おそらくは女戦士(おんなせんし)の、ヒラついた装束(しょうぞく)にぶらさがった大手(おおて)RPG(アールピージー)のモンスターのマスコット。

 ころがった頭部(とうぶ)(くび)もとに、おまもりのように引っかかったワイヤレスヘッドホン。


(この人たちは……ボクと(おな)世界(せかい)から来たんだ)


 ユノは()ちすくんだ。


 身廊(しんろう)おくで、黄色い一対(いっつい)、光った。

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