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68.ショート・ボウ
・前回のあらすじです。
『精霊と、巫女についての説明』
アルゴルの手に暗い光が灯る。
一瞬の閃きを経て、闇の魔力は短弓の形を取った。
ダークエルフの指先に暗黒の矢が生まれる。
「われわれ魔族が人界を治めたほうが、平和になると思いますがね」
アルゴルの独白をユノは否定できなかった。
ローランが吐き捨てる。
「きょーみ無いわよそんなこと。精霊の復活だって、私の用事の『ついで』なんだから」
「と言いますと?」
「竜よ。彼女を返してもらう」
ひゅんッ。
ユノとローランの足元に黒い矢が飛んだ。
パンドラを抱えてユノは横っ跳びに避ける。
「パンドラ、危ないって感じたらちゃんと逃げるんだよ」
「ユノさんたちを置いて?」
パンドラは唇を尖らせた。
魔法の矢が二人のそばに直撃する。
爆風が生じてユノとパンドラを吹き飛ばす。
「なんにせよ、霊樹へは行かせません。そして――」
金色の目をすがめ、アルゴルはユノに狙いを定めた。
「異界の勇士よ、あなたにはここで死んでいただきましょう」