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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第1話 ユノ
7/92

7.瞬殺



 ・前回のあらすじです。

『戦士が主人公しゅじんこうにケンカを売る』







 クレイモア。

 全長(ぜんちょう)百九十センチもある長剣(ちょうけん)を、男――シグは(かつ)ぐようにかまえていた。


 戦闘(せんとう)開始の声が鳴ると共に、シグがゆかる。

 上段(じょうだん)から、ユノ目掛けて一気いっきに剣を振り下ろす。


「ひっ!」

 ユノは強張こわばっていた。

 肩に迫る刀身(とうしん)に、でたらめに武器(ぶき)りまわす。


 硬質な音が弾けた。

 折れた()が、地面に落ちる。


 ばっ!!


 赤い飛沫(しぶき)があがる。


(え!?)

 自分の(かた)をユノは触った。傷はい。

 顔面に血潮(ちしお)を浴びる。


 シグの上半身(じょうはんしん)が、グラリとずれた。

 金属の(よろい)ごと、彼の身体はスパリと()れて、地面に落ちてころがった。

 数秒後。

 立ったままだった(むね)から下の身体も、バランスをくずしてたおれる。


勝者(しょうしゃ)をユノとする」

 玉座(ぎょくざ)から、王は決闘(けっとう)の終わりをげた。

 兵士たちが、あわててシグの死体(したい)を片付ける。


 ユノは尻餅しりもちをついた。

 返り血で汚れた全身が、ガタガタとふるえていた。

 玉座(ぎょくざ)()にいた戦士(せんし)たちは、遠巻きになって、『勇者』になった少年をながめていた。


「帰りましょうか、ユノさま」

 セレンがユノの横に()つ。

 壇上(だんじょう)の王に、彼女は言った。

「明日も、お目通(めどお)りを願いたいのですが」

「準備をしておこう」

 ペンドラゴン王はうなった。


 くつを鳴らして、セレンは広間をる。

 ついてこないユノを、彼女は一度いちどだけ()かえった。

 そして、先に帰っていった。


「いやな思いをさせたな」

 王は肩からちからを抜いて、ユノに謝罪しゃざいした。

 兵士たちが、横から少年の腕を取ってささえる。


「つ、つかまるんですか? ボク……」

「あの若者の死なら気に()むな。決闘による殺人(さつじん)は、(つみ)にはならん」

 担架(たんか)に載せて運ばれていく若者の死体に、王は十字(じゅうじ)った。

 もう一度いちどユノを見る。

「戦いのない世界(せかい)で育ったのだろうな、そなたは。私としても、平穏な(くに)の人間を、戦禍(せんか)に投じたくはなかった。だが、あの妖姫(ようき)は……」

 豊かに伸びたヒゲごと、王は自分のくちをおおった。

「グチっぽくなったな、すまない。ただな、ユノと言ったか」

 ユノは王を見上げた。

「あの妖精(ようせい)を信用しすぎぬことだな。あれは有用とあれば、(かみ)(がわ)にも、魔族(まぞく)の側にもつく種族(しゅぞく)ゆえ」


 玉座にもたれかかり、王は兵士にユノを送るようめいじた。

 ユノは城を出た。

 それから兵士のんだ辻馬車(つじばしゃ)に乗って、宿屋まではこんでもらった。





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