67.精霊の巫女
・前回のあらすじです。
『塔のてっぺんで魔王の遣いアルゴルと、ユノたちが対峙する』
メルクリウスの巫女は、精霊の御霊をやどす『依り代』である。
【精霊】たちは人間界における自然の調停を担い、【霊樹の里】への交通路である【塔】の番人をもつとめる超常の存在。
中でも塔を任されるような上位精霊は、自身に破滅のあった時、世界の入りぐちを鎖して魂の一部を人界に用意した『片割れ』にたくす。
霊魂のカケラを守り、神の御舎たる霊樹に還り、ふたたび自身を大いなる存在へと育むために。
「我が主君【ディアボロス】様はそれを懸念しておられる」
ダークエルフの男――アルゴルは言った。
「だから彼は私をここの門番に立てた。人間支配の布石に封じた精霊を、やすやすと復活されてはたまりませんからね」
ローランは舌打ちした。
アルゴルの話に、ユノは眉をひそめる。
「ローラン、精霊って?」
「自然界の化身よ。詳しくは省くけど、木や水、火とか土の源であり、そうした資源を操ることができる。だからいなくなったら川は枯れるし土壌も痩せる。飢饉や疫病も流行るし、人を守る側の神さまも、かなりちからが制限される」
「ディアボロスってのは?」
「魔族側の神さまよ。ユノ、あんたセレンからなーんも聞いてないのね」
「うん……」
情けなくユノは頭を掻いた。
パンドラのほうにローランが青い瞳を滑らせる。
アイコンタクトに気づいて、ユノは魔鳥の少女を護る位置に立った。




