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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第7話 雨期(うき)
57/92

55.罰


 ・前回のあらすじです。


 『ユノがグレた経緯いきさつを話す』






「ローランって言ったよね」

「ええ」


 ユノは長椅子(ベンチ)に座る女剣士(おんなけんし)を見おろした。

 今日はお互いに武具(ぶぐ)をつけていない。剣士という(しょく)からはとおい、私服(しふく)すがただった。


「きみはその……ひょっとして、ボクを(つか)まえに来たの? 騎士(きし)か何かとか?」

するどいわね。騎士じゃないけど」

 ローランはスカートのポケットから紙切(かみき)れをヒラつかせた。


「それは?」

「ギルドの依頼書(いらいしょ)。その(ひか)えよ。『ドレイ(しょう)おそ(とお)()をやっつけてください』ってね」」


 よくようと()ばしたユノの手を、ローランがひょいとかわす。


「ボクをどうするの?」


 ユノの質問に、ローランは広場をパトロール(ちゅう)の男をあごで示した。

 ペンドラゴン王国の徽章(きしょう)をさげた巡回(じゅんかい)騎士の制服(せいふく)に、ロングスピアをたずさえた警邏(けいら)隊員だ。


「あの人にでもあなたを突き()せば私はクエスト達成。れて報酬(ほうしゅう)を手にし、あんたは(しか)るべき調査を受けたのち、(ばつ)を受ける。死刑ってのが妥当(だとう)かしらね」


 彼女かのじょ(よこ)に座っていたパンドラが息を飲んだ。

「ローラン、なんとかできないの? ユノさんのこと」

「そーゆーられるの、ものすごく(こま)るんだけど」

「…………」

 ユノは片眉(かたまゆ)をピクつかせた。


「ボクのやったことが――誰かを助けることが、そんなに悪いことなの?」

「はき違えてんじゃないわよ。あんたは立派な人殺しなのよ」


 ローランは(はず)みをつけて立ち上がった。

 あおい目に()すくめられて――ユノは(にら)み返す。


「ユノ」

 フッと真顔(まがお)になって、ローランのほうがあさっての方角(ほうがく)を向いた。

「わたしは【霊樹(れいじゅ)(さと)】に行くつもり」

「れい……じゅ?」


 ローランはうなずいた。

妖精(ようせい)たちのむ所よ」


 ユノは一瞬(いっしゅん)セレンのことを思い出した。


「ちょっと特殊(とくしゅ)な場所だから、手続きがめんどくさいけど」

「何をしに行くの?」

 ユノは固唾(かたず)んで訊いた。

 答えてくれるだろうかと少し不安になる。


()られたものがあるのよ。それを返してもらいに」

「盗られたって? なにを?」

「私の宝物(たからもの)


 微笑(びしょう)して、すぐにそれは少女の銀の前髪(まえがみ)の陰にかくれた。


「ただ、危ない(はし)渡んなくちゃいけなくてね。私は半年間(はんとしかん)この界隈(かいわい)で、戦力(せんりょく)になりそうな人を探していた」


 ユノは自分のこめかみを()いた。

「えっと……それで?」

「んも~っニブいわねー。あんたの手え()してほしいっつってんのよ。そしたらあんたのことくらいなら、まあ、どうにかしてやれるわ」

「きみが?」

 ユノはうろんげにをすがめた。

「だって、騎士じゃないならどう見ても盗賊(とうぞく)か――良くって悪徳(あくとく)商人(しょうにん)ってとこじゃないか。そんなきみに何ができるって言うのさ?」

「うっさいわね。のるの? のらないの?」

 ローランは腕組(うでく)みしてムスッとユノをにらんだ。


「ユノさん」

 パンドラが(いの)るようにつぶやく。




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