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54.過去
・前回のあらすじです。
『ユノとローランが再会する』
・・・・・・
三人は街の広場にいた。
飲食店やギルド、宿屋が軒をつらねている町人たちの憩いの場だ。
瑞々(みずみず)しい葉をつけた植木の陰にベンチが設けられており、ローランがそこに腰かけていた。
ユノの話を聞いている。
【コルタ】の町で起こった【魔族】との混血へのあつかい。
非道がまかり通るこの世界への不信と、勇者としての使命のむなしさ。
「ボクはもう、こんな世界のことなんて知らない。蹂躙されている人たちだけを救うって決めたんだ」
「馬鹿じゃん?」
ローランはあきれた。
ユノは植木にもたれていた身体を起こす。
「きみには分かんないよ。踏みつけられるだけの側の、気持ちなんて……」
「あんたもしかしていじめられっ子?」
頬杖ついてローランはユノを見あげた。左耳のまえに垂れた銀の三つ編みが揺れる。
ユノは頷いた。
「そう。ボクのいたところ……『日本』っていうんだけど、そこの学校にいた時、ボク毎日イヤがらせを受けてた」
「へなちょこだから?」
「ほっといてよ」
ユノの額にピキッと青筋が浮かぶ。




