表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第7話 雨期(うき)
54/92

52.苦い薬



 ・前回のあらすじです。


 『少女の看病かんびょうでユノが目を覚ます』





 部屋は広かった。

 クローゼットと洗面台(せんめんだい)文机(ふづくえ)があってなお(だん)らんようのソファがある。

 良質な宿屋だとユノは直感した。そして誰がここの宿泊料金を払うのだろうと震撼した。


 ユノはベッドに横たわったまま、少女を見た。


「きみがボクを(はこ)んで来てくれたの?」

「ううん」

 ふるふると少女は亜麻色(あまいろ)(かみ)を揺らす。

信号弾(しんごうだん)で人をんで……まちの門兵さんが来てくれたの」


 少女は唐突に、ぱっと手をたたいた。

 ローブを直して()ずまいをただす。


「ユノさん、そういえば私、まだ名乗(なの)ってなかった。パンドラって言います」


 ぺこ、と少女――パンドラは()()()をした。

 それからベッドわきの小卓(テーブル)からコップを取り、煎薬(せんやく)を入れて水と混ぜる。


「あなたのことはローランから聞いたの。いろいろと手配(てはい)してくれたのも彼女」


 水薬(みずぐすり)をユノは受け取った。


「ローランっていうのは――」

「ユノさんが斬りかかった()


 ごくり。

 ぎこちなくユノはのどを鳴らした。

 ぬるい液体(えきたい)が胃にしたたり、身体のだるさをほぐす。


「その子もいるの? この近くに」

 ユノは(にが)い薬を一気(いっき)にあおり、ばつの悪さと共に飲みくだした。

 不味まずい。


「ちょっとだけ(はな)したいとは思ってるんだ。ボクのこと、どこで知ったのかとか()きたいし」

「それが――その……」


 パンドラは()(ぐち)のほうに歩いた。

 フックに掛けていた旅用の(かた)かけかばん()ろし、ユノに返す。


「ユノさん、ローランはね……」


 (あか)を伏せて、パンドラは(うつむ)いた。

 渡された鞄をなかば抱きしめるようにして、ユノは彼女の言葉(ことば)を聞いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ