表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第7話 雨期(うき)
50/92

48.パッツン



 ・前回のあらすじです。


 『ぞくの素顔がさらされる』






 地面(じめん)はぬかるんでいた。

 【土用月どようづき】――季節の変わり目にあたる雨期(うき)――にはいってから、頻繁(ひんぱん)に降ったりやんだりを()りかえす天候(てんこう)に、大地は湿潤(しつじゅん)を失うことができないでいた。


 ばしゃり。


 ブーツが水溜みずたまりを割る。


 一寸(いっすん)先も定かではない夜の(はやし)を、全力(ぜんりょく)でユノは疾走(しっそう)していた。


(誰だったんだろう、あの子)


 素顔(すがお)を見るなり、ユノの名前をさけんだ少女。

 パッツンと銀色(ぎんいろ)頭髪(とうはつ)を短くして、こめかみのあたりに高価(こうか)そうな飾りをつけていた。


(ドレイ商人――だよね。大声でそんな感じのこと言ってたし、装備品(そうびひん)なんか全部高級(こうきゅう)そうだったし)


 彼女がつけていた(かみ)飾りは【護符(アミュレット)】だった。

 胸当(むねあ)てとレイピアは、希少(きしょう)鉱物(こうぶつ)――ミスリル(せい)

 その下に()ていた服やハーフパンツもまた、金糸(きんし)縁飾(ふちかざり)刺繍(ししゅう)をほどこした高級品だ。

 (あめ)よけの外套(がいとう)も夜に目立(めだ)(しろ)で、()には宝石(ほうせき)まっていた。


(あんな金持ちそうな子、ボク会ったことないと思うんだけど)


 少女の歳は十三か十四才くらいだった。

 そして一瞬(いっしゅん)だけ、近くで表情(ひょうじょう)は、


(……あんなキレイな子、会ってたら忘れてたりしないだろうし)


 ガツン。


 ユノは木にぶつかった。

 すぎ(みき)(はな)したたかに打ち、うずくまる。


(でも、ボクのこと知ってた。どうしよう、口封(くちふう)じしとくべきだったのかな)


 ダラダラ流れる鼻血(はなぢ)をぬぐう。

 勢いあまって、(ほお)にできていた()きずを手の(こう)でこすってしまう。


 ――もどって(いき)()を止めるか。


 少しの間だけ考えて、ユノはひざにちからを()めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ