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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第1話 ユノ
5/92

5.さいきょー



 ・前回ぜんかいのあらすじです。

 『主人公しゅじんこうたちが、お城にはいる』






 ・・・・・・


 玉座(ぎょくざ)()にも戦士たちはいた。


 王のそばに、ローブすがたの老人がひかえている。彼はしわまみれの手に、一枚いちまいの丸い(いた)を持っていた。


 (あか)い絨毯の敷かれた床に、木や、骨でできた(ぼう)っきれが落ちている。


(なんだこれ?)

 不思議がるユノの目のまえで、棒は(まぼろし)のように、次々とえていった。


 ――玉座(ぎょくざ)の男が言う。

「久しいな、セレン」

「ご無沙汰しております。アルトリウス陛下(へいか)

 悠然ゆうぜんとセレンは一礼(いちれい)をした。ユノも国王(こくおう)に頭を下げる。

「呼んだのか。異界の者を」

 豪奢ごうしゃな肘かけに、王は体重をあずけた。白髪(しらが)の多い頭を片手でおおう。


 謁見(えっけん)()つどった戦士たちを、セレンは一瞥(いちべつ)した。

「選ばれた者はいましたか?」

 いかついあごを王はしゃくった。

 消えていく木や骨が、彼の示した先にある。

 ゆかはほどなく、キレイになった。


「『神託(しんたく)銅板(どうばん)』ですね。救世主にのみ、()(さば)く剣を与えるという……」

「できることなら、我々の世界の人間にその栄誉をさずけたかった」

「『栄誉(えいよ)』」

 しずかにセレンは繰り返した。頭を低くしたまま進言(しんげん)する。

 「に腹はかえられない、と言います。どこの世界の出身であろうと、それで平和がおとずれるのなら」


 王はうなった。となりの老人に、指を動かす。

「それを、あの若者に」

 壇上だんじょうから、ローブの男はユノのもとにりた。丸い板をす。

 それはくもった鏡のようだった。

 赤銅色(しゃくどういろ)の表面には、なにも映らない。


「あのー……」

 わけが分からず、ユノはローブの男をあげた。

 老人は説明をした。

「なにも考えず、手をかざしなさい。この神器(じんぎ)は、英雄には剣を、そうでない者には、一時(いっとき)(まぼろし)を与える」

(まぼろし……)


 ぐっとユノはつばを呑みんだ。

 その希薄(きはく)な言葉は、ひどく遠ざけたい『なにか』を、唐突として、生々(なまなま)しい、実体のあるものへと昇華(しょうか)する作用さようを持っていた。


 いたの表面に手を当てる。

 火花がった。

 閃光(せんこう)が、広間を白く染めあげる。


 光が失せる。


「……なんと、」

 (くろ)い目を王はいた。

 周囲(しゅうい)の戦士たちもどよめく。

 一振ひとふりの(けん)が、ユノの手にはあった。


霊験れいげんなる金属、オリハルコンの刀身(とうしん)英知の文字(ルーン)の刻まれた(つか)。……『カルブリヌス』か」


 愕然がくぜんと、王――アルトリウスは玉座にしずみ込んだ。

「……そなたが、勇者ゆうしゃだ」

 重々しく、ユノに()げる。

 あたりはシン……としていた。


 少年の手のなかで、引き抜いた(つるぎ)だけが、祝福しゅくふくするように輝いていた。





 ・いくつかの表現を変更しました。(以下は、その一例です)


  旧→『何もかんがえず、手をかざしなさい。この魔法マジック・道具アイテムは、英雄には剣を(略)』

  改→『何も考えず、手をかざしなさい。この神器じんぎは、英雄には剣を(略)』



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