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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第6話 ローラン
49/92

47.剣士


 ・前回のあらすじです。


 『ぞくがローランに襲いかかる』





 (かみ)飾りが割れた。

 白い光がローランの全身を包み込み、頭上(ずじょう)凶刃(きょうじん)を受け止める。


 (どろ)に立てていたレイピアを()きざま、ローランは剣士を()りつけた。


 ガンッ!!


 火花(ひばな)が散る。


 両手(りょうて)持ちの剣を軽いもののように片手でひるがえし、(ぞく)は少女の一撃(いちげき)を跳ね返す。


(男――よね?)


 双方(そうほう)共にうしろへ跳び、相手との間合(まあ)いを取る。


(ちょっと背は低いけど……)


 顔は分からなかった。


 頭頂部(とうちょうぶ)から鼻のあたりまでをスッポリおおう、仮面(かめん)のようなかぶと(サリット)

 外套(がいとう)()いて明らかになった体格は、(よろい)の形に補正(ほせい)されているものの、き出しの(くび)と腕のラインは若い。


十代(じゅうだい)かしら? 二十歳(はたち)はまだいってないような……)


 武器(ぶき)――ツヴァイハンダーをろし、自然体(しぜんたい)に構える男に、ローランは(あお)い目をすがめる。


 真っ暗な(はやし)の中、地面(じめん)に落としてなお燃えつづける松明(たいまつ)だけが、この場で唯一ゆいいつ動くものであるかのようだった。


「あんた何者? 魔族(まぞく)売買(ばいばい)を邪魔しているようだけど、正義(せいぎ)の味方ゴッコですか?」


 ――泥がねて、


 咄嗟とっさにローランは身体を左に(かたむ)けた。


 剣圧(けんあつ)がこめかみをけずる。

 数本の銀髪(ぎんぱつ)と共に()が弾ける。


 男は止まらなかった。


 体勢(たいせい)くずしたローランを追って、彼女の首に(けん)一閃(いっせん)


 まえに飛び込み、ころがって、重い()ぎ払いをローランはくぐりぬけた――

 が、


 ()を返すと、男は想像していたより速い動きで刃を大上段(だいじょうだん)に持っていった。振りろす――


(……っっ!)


 グリープで守られた(あし)が、せま白刃(はくじん)(はら)()っとばす。


 ――剣の軌道(きどう)が逸れる。


(し、死ぬ!! 死ぬかと思った!)

 蹴り飛ばした勢いのまま(ちゅう)一回転(いっかいてん)して、ローランは男から距離(きょり)を取る。


 ガン!

 とぬかるみを()った剣を、男は再び持ちあげる。


 ベルトにむすんだ巾着袋(きんちゃくぶくろ)から、魔力(まりょく)を持つ石――【ジェム】を少女は取り出した。


(これ以上いじょうはヤバイわね。いちかばちか)


 少女の(どう)目掛めがけて、男が剣を弧状(こじょう)に斬り払う。


 斬撃(ざんげき)がローランの服をかすめた。

 うしろに跳躍(ちょうやく)したものの、皮膚(ひふ)一文字(いちもんじ)()ける。


 同時に黄色(きいろ)い石を男に向かって投げつけた。


 彼のバイザーの前で、それは爆発(ばくはつ)を起こす。


「がっ……!」


 (ねつ)衝撃波(しょうげきは)はじかれて、男が身をのけぞらせる。


 ひゅっ――


 (つめ)たいものが、男の(ほお)とサリットの()()()すべり込んだ。


「よっくもやってくれたわね。顔、おぼえさせてもらうわよ」


 カンッ。


 とローランのねあげたレイピアが、鋼のかぶとを打ち上げた。

 うつろな音をたてて、男の顔を隠していたものが月下(げっか)う。


「あっ!」


 ローランは目を()開いた。


 サリットの下から現われたのは、短い黒髪(くろかみ)

 頼りなさげな黒い()

 年のころ十五、六歳ほどの――


 ばっ!!


 マントをひるがえして男――少年は、暗闇に(はし)り去っていった。


 ローランは()い駆けることも忘れて、ともすればまるで呼び止めるかのように、彼の正体を(さけ)んだ。


「ユノ!」





 読んでいただき、ありがとうございました。



 ・以下の文章を修正しました。


  きゅう→『武器ぶき――トゥハンド・ソードを下ろし、自然体しぜんたいに構えるおとこに、(略)』


  改→『武器ぶき――ツヴァイハンダーを下ろし、自然体しぜんたいに構える男に、(略)』



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