44.夏の終わり
・前回のあらすじです。
『銀髪の少女ローランが、冒険者ギルドに駆け込む』
「ここも淋しくなったわね」
受け付けの女性が言った。
夏の終わりの蒸し暑さただよう待合所には、パーティがひとつ、 分け前を分配しているすがたのみ。
それも数日前は四人だったのが三人に減っている。
「モンスターも調子いいみたいだしねー、仕方ないんじゃないかなあ」
ローランはカウンターにふたつの巾着袋を置いた。
ひとつは依頼品の薬草が、もうひとつには魔物から採ったジェムが入っている。
鑑定人のおじいさんが、片めがねを磨きながらぼやいた。
「勇者は今頃どこで何をしているんだか……魔族をなんとかしてくれるんじゃなかったのか」
「そーよ、そうそう勇者さま。ローラン、あんた王都で見てきたんでしょ。どうだった? 男前だった?」
「五年後に期待って感じかなー」
ローランは掲示板をながめながら答えた。
一枚の依頼書のピンをはずす。
「なにこれ?」
――討伐クエスト。
商隊襲撃犯の首を求む。
王国騎士団より――
「それはやめときな、嬢ちゃん」
ガチャリと鈍い音をたてて、テーブル席から鎧の男が振り向いた。
頬に傷のある四十路ほどの大剣使い。
団体席で話し込んでいるパーティのリーダーである。
「よそのギルド支部でそのクエストにあたったヤツらがいたが、全員死体になって帰ってきた」
「まじ?」
「まじ」
少女に鸚鵡返しして、男はメンバーたちとの次のクエストの打ち合わせにもどった。
ローランはギルドのカウンターを見る。
「これ、ただの山賊とかじゃないの? それとも殺人狂とか……なんかやばいやつ?」
「さあなあ、被害にあってるのは魔族を載せたドレイ商や、それにくっついていった討伐者とは聞いているが……」
鑑定を終えた老職員が、報酬を準備をしながら言った。
「……わりかしイイやつなんじゃないの? これの犯人」
「あんた……そんなこと言ってると信者に殺されるわよ」
「上等だわ」
職員たちのほうに依頼書を持っていく。
賊退治を引き受ける。