43.一年後
・前回のあらすじです。
『コルタでのクエストが完了する』
※ほかのキャラクターに視点が移ります。主人公はしばらく出てきません。
夕方に降り出した雨は、ほどなく雷を伴った。
風が荒れ、雨粒が砂礫のように飛んで、強かに大地を撃つ。
少女は雑木林から拠点へと急いだ。
髪飾りをつけた銀色のおかっぱ。
防護用の胸当てと腰にさげた細身の剣は、いずれもミスリルであつらえた高級品である。
草原にたたずむ都へと駆けこみ、彼女は中心を目指した。
レストランや宿のたたずむ石畳の広場。
そこにぽつねんと小さな施設建っている。
『冒険者組合 バーライル支部』。
ばん!
ドアを押し開けて、濡れた顔をぬぐうなり少女は叫ぶ。
「もー最っ悪!」
「あはは、やっぱり降られたわねローラン。マント持ってけばよかったのに」
受け付けから職員の声とタオルが飛んでくる。
銀色の髪と泥のついた装備品をぬぐって、少女――ローランは息をついた。
――【王国暦 四二一年】。
【二土用の月 第三日】。
王都に勇者が現われて一年が経っていた。
彼は【コルタ】での戦いをはじめとする、王からの救援依頼を各地で順調にこなしているようだった。
だが肝心の魔王討伐については、いまだに目覚ましい報告があがっていない。




