41.同類
・前回のあらすじです。
『町の人たちに、魔族の少女・アイが殺される』
・・・・・・
「娯楽って言うんですよ」
セレンはユノの傍に立っていた。
焼け落ちて骨組みだけになった小屋。
焦げた地面には白い灰だけが残っている。
町人たちは帰っていた。
ユノは警備のためと偽って、ここに留まった。
草のなくなった庭にぺたりと座りこんで、少年は呆然としている。
夕日は沈んでいた。
全てが闇の中だった。
「あなたの世界にもあったでしょう?」
セレンはユノの背中に言った。
「…………」
ユノはようやく動いた。
「……どうして、」
戦いで汚れた手が、黒い土を引っ掻く。
「どうして来てくれなかったんですか……」
「洞窟で呼んだ時?」
「……ッ」
カッとユノの身体が熱くなる。
セレンの返事に彼は怒号した。
「聞こえてたんじゃないか!」
カルブリヌスを取ってユノは立ち上がった。
妖精に向かって剣を振る。
ガツンッ!!
木の根で作った簡素なロッド――霊樹の杖が、ユノの一撃を受け止めた。
セレンは軽く押し返す。
ユノは後ろにバランスをくずす。
「生憎と、私はあなたの便利屋ではありませんので」
緑の長い髪を指で梳いて、妖精の長は答えた。
「第一、何を悲しむ必要があるのです?」
ユノはまぬけにくちを開けた。
「なにって、」
ぱくぱく動かして――やっと言葉を見つける。
「だってアイが……人が殺されたんだ! 何も悪いことなんてしてないのに!」
「はあ」
要領を得ないふうにセレンが返した。
「セレンさん分からないの!? ただ魔族ってだけで……町の人たちはアイを排除したんだ! 何も知ろうとしないで、勝手に敵って決めつけて……」
「それ、」
月光がセレンの若草色の目を不思議そうに艶めかせた。
「あなたのやってきたことと、何が違うんです?」
ユノは凍りついた。
鞄のなかには、今まで討ってきた魔物たちの死体が、いくつも詰め込まれていた。