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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第5話 剣(つるぎ)
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40.ジェム



 ・前回のあらすじです。


 『ユノが森のボスを倒す』





 ・・・・・・


 夕焼(ゆうや)けが来ていた。


 ユノは洞窟(どうくつ)から森に出る。

 身体の(いた)みを薬草(やくそう)咀嚼(そしゃく)してごまかして、彼はようよう出口(でぐち)まで戻ってきたのだった。


 肩に掛けたかばん隙間(すきま)から、狼の残した魔物(まもの)(かく)――【ジェム】の輝きがほんのりと()れている。


 他の魔物(まもの)はエリアの頭領(とうりょう)うしなって、各々(おのおの)(ねぐら)に身をひそめているようだった。


 ユノははなをヒクつかせる。

 空気は乾燥(かんそう)していた。

 (のど)をボソボソと()くような、(すす)(くさ)さが混じっている。


 黒煙(こくえん)がひとつ、朱色(しゅいろ)の空にのぼっていく。


(……逃げてる、よね)

 ユノは()け出した。

 ()れたほね胸部きょうぶ鈍痛(どんつう)を訴える。


(そうだ……それに、(はし)だって壊したし)

 自分に言い聞かせながらあし(はや)める。


 からまる下草(したくさ)を蹴っ飛ばし、進路を(はば)むツタや(やぶ)()き分けて、ユノは少女の小屋へ急いだ。


 ・・・・・・


「やあ、ユノさん」


 町長(ちょうちょう)のアルゴは「ご無事でしたか」と相好(そうごう)をくずした。

 剣や(やり)をたずさえた町人(ちょうにん)が、大きな(ほのお)の周りにいる。


 彼らのくつ脚絆(きゃはん)――腰元(こしもと)までの装備には、水に()かった(あと)があった。


 小屋は燃えていた。


「ごらんください。魔女(まじょ)めはこのとおり」

 右手(みぎて)に持ったものをアルゴは(かか)げた。


 あか宝石(ジェム)が、男の手の中で心臓(しんぞう)のように(みゃく)打っている。


「ユノさんは、今までどちらに? 道にでも(まよ)われていましたかな」


 熱波(ねっぱ)を噴き上げる家屋(かおく)まえに、はい小山(こやま)が出来ていた。


 寒気(さむけ)がユノの背筋せすじ()う。


 ぼろぼろになった赤い頭巾(ずきん)が、灰の中に落ちていた。




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