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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第5話 剣(つるぎ)
41/92

39.決着



 ・前回のあらすじです。


 『狼の攻撃にユノが深手ふかでう』





 立ち上がりざまにユノは(けん)を抜き(はな)った。

 最後に飛んだ(ぎん)(やいば)を上にはじく。


 ()()()のような白刃(はくじん)が、天井てんじょう(にぶ)い音をたてて突き()さった。


 おおかみが――敵が()える。

 洞穴(どうけつ)の空気がビリビリ震え、ユノの動きを(あっ)した。


『あんな連中を助けてなんになる』

 フォルクス=メルヒェンは()いかけた。

 大きな身体を弾丸(だんがん)にして、ユノに跳ぶ。


 ユノは立っているのがやっとだった。

 ショート・ソードを構え、狼の頭突(ずつ)きをしのぐ――


 ばきん!


 (てつ)刀身(とうしん)が砕けた。

 硬質(こうしつ)(ひたい)がユノを()き飛ばす。


 からから。

 (やいば)湿(しめ)った土の地面を(すべ)った。


 (けもの)前肢(まえあし)が少年の肩を()みつける。

 ごきん。

 と関節(かんせつ)(はず)れた。


(まち)の人間を守るのは、あの少女の不幸(ふこう)を意味するのだぞ』


 銀色の獣の目は血走(ちばし)っていた。


 【魔女(まじょ)】の駆逐(くちく)意気(いき)揚々(ようよう)としていた【コルタの町】の住人じゅうにんたちが、ユノの意識をかすめる。

 (かさ)なって――この世界(せかい)に来る前の場所(ばしょ)での記憶(きおく)


「でも、ボクは……」

 ユノは完全に自分が【異世界(ここ)】に来るまでのことをおもい出した。


「イヤなんだ。どちらかの犠牲(ぎせい)の上に成立させる平穏(へいおん)なんて……っ」


 唾棄(だき)するように狼がはならす。

 大きな(くち)を開く。

 おくまで()えそろった獰猛(どうもう)(きば)がユノを狙った。


(セレンさん――)


 ユノは妖精(ようせい)を呼ぼうとした。

 が、(すん)でのところでその発想(はっそう)を捨てる。


「かっ――」

 ユノは(さけ)んだ。

「カルブリヌスを!!」


 オリハルコンの(つるぎ)が空気を()いて地面に()さった。


 上空じょうくうから(あらわ)れた伝説の武器(ぶき)に、狼の視線が一瞬(いっしゅん)()れる。


 (けん)は――ほんの少しユノが手を()ばした先にある。


 ユノは全身の(ちから)を振りしぼった。


(ひかり)よ!!」

 渾身(こんしん)の思いを咆哮(ほうこう)にして、ユノは【気術(きじゅつ)】を(はな)った。

 狼の前に小さな閃光(せんこう)(はじ)ける。

 (とぼ)しい爆発が()こる。


『これしきの威力(いりょく)で――』

 ダメージはゼロだった。

 ただ獣の(あし)が、かすかに動く。


 拘束(こうそく)からユノは()い出した。

 カルブリヌスの(つか)を取る。


 ガクガクとひざ悲鳴(ひめい)を上げる。


「ぐっ……」

 おおかみ(あぎと)が、ユノを無力化しようとあたまを目掛けてひらく。


「くっ、おおおおおおおおおお!!」


 両手(りょうて)でユノは剣を振り上げた。


 オリハルコンの刀身(とうしん)が、おともなく相手を(つらぬ)く。

 毛皮を(つた)って、狼のむねから赤黒(あかぐろ)液体(えきたい)ほとばしる。


(おろ)かな……っ』


 巨狼(きょろう)【フォルクス=メルヒェン】は(なげ)くように(うめ)いた。


 ザラザラと獣の肉体が(くず)れる。


 体毛(たいもう)が。

 皮膚(ひふ)が。

 肉が。

 骨格(こっかく)はいになり、(ゆか)に積もる。




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