37.白骨の山
・前回のあらすじです。
『ユノが穴に落ちる』
――強かにユノは腰を打った。
ガラガラと白骨の山がくずれる。
古い時代の人柱の残骸から顔を出して、ユノはあたりを見まわした。
奥に明かりがある。
銀色の、刃物にも似た、あやうい輝き。
「ここは……」
『わたしの寝所だ』
光が答えた。
重い低音にユノはギクリとする。
自分を受け止めてくれた硬質なものから這い出して、それが人骨だと気づいて飛び退る。
『きみが此度の勇者か?』
むくりと金属的な光沢が起きあがる。
それは巨大な狼だった。
「あなたがこの森のボス、【フォルクス=メルヒェン】?」
抜き身のままにしていた剣を、ユノは迷ったのち鞘にしまった。
「ボク、お願いがあって来たんです」
『私にそれを聞く義理は無いな』
狼――【メルヒェン】は鼻で笑った。
天然の階になった岩塊から飛び降りる。
『あの腐った町から来たのだろう? 私を倒すために』
ユノは頷いた。
「でも、そうするとアイも死ぬ。町の人たちは、モンスターの襲撃が彼女の仕業だって思ってるんです。そして行動を起こそうとしてる」
『滑稽な話だ』
狼は銀色の目を細めた。
「……あなたが、もうコルタの町を襲わないって約束してくれれば、町の人たちを説得できるかもしれない」
『むりだな』
「どうして」
『彼らにとって理由なんてものは何でもいいんだよ』
大儀そうに狼は動いた。




