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30.閃光
・前回のあらすじです。
『町人たちが魔女の退治に乗り出す』
・・・・・・
【フォルクス=メルヒェンの森】は沈黙していた。
まるで全ての生き物が、外側のようすをうかがっているかのよう。
昨日の閃光は森を大破させていた。
気術の光線が抉った地面を、ユノは街道代わりにして駆けていく。
どこに辿り着くかは不明だった。
「これは……?」
他より大きな樹の元にユノは出た。
まるで神木のように、それは永い命と重たさを感じさせた。
だが、それも幹の半ばで焼けて、折れている。
がりっ。
ブーツの底が硬いものを踏む。
石でできた、狼の頭部だった。
(石像かな? 前に来た時には、こんな場所なかったのに)
壊れた像からユノは離れた。
あたりを見回す。
爆風で折れ、かさなり合った木々の表面で、キラリとなにかが光った。
「銀色の毛?」
つまみ取った一房の毛を、ユノは木漏れ日に透かす。
「人間のじゃないよね……」
それは針金のように硬く、光の角度で青や紫にも見えた。
(魔物のかな?)
銀色の毛からは、ぼんやりと不思議な力が感じられた。
――進路を決める。