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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第4話 おおかみ
30/92

29.異端



 ・前回のあらすじです。


 『ユノがしょを出て森に向かう』





 ・・・・・・


 詰所(つめしょ)からユノは出ていった。

 その後、外にいやられた町人(ちょうにん)たちは、町の集会所(しゅうかいじょ)で手持ち無沙汰(ぶさた)に武器をいじる。


 広い部屋のなかで誰かが言った。

「だいじょうぶかな、あの坊主ぼうず

「【気術(きじゅつ)】が使えるって言ってたぞ」

妖精(アールヴ)(ちから)を借りる……って、あれか」


 町人たちはそれぞれに渋面(じゅうめん)をつくった。

 彼らが信仰する【竜神教(りゅうじんきょう)】は、かつてこの世界に存在していた土着(どちゃく)神々(かみがみ)を【異端(いたん)】とし、長い時間をかけてはらった。

 そのなかで、唯一(ゆいいつ)手を出せなかった種族が【妖精(ようせい)】だ。

 それは、『妖精の世界への影響力(えいきょうりょく)は他の種族の()にならないほど甚大(じんだい)で、排除(はいじょ)することはできない』という事情に()る。


 しかしコルタの住民をはじめ、一般(いっぱん)の信者にそうした内情は伝えられていない。

 『教典(きょうてん)』における妖精はあいまいな記述に終わり、その種族に対する得体(えたい)の知れなさだけが、ひとり歩きしている。


妖精(ようせい)か」

 町長のアルゴがつぶやいた。

「かつては神と対立したが、その(ちから)を認められ庇護(ひご)あたえられたという……」

 教典の一文(いちぶん)を引用し、眉根(まゆね)を寄せる。

「信用してもいいものなんでしょうか? 妖精は」

「それが(かみ)の教えであるならな……」


 アルゴはうめいた。

 アールヴへの信仰について、教典はなにも語らない。


「しかし、魔女(まじょ)ほろびるべきだ」

 アルゴはイスから立ち上がった。

「森のなかに、必ずあの【魔族(まぞく)】の親子がいる。十年前……追放(ついほう)処分で済ませてやった恩を、(あだ)かえすとは」


「人間の血が(はい)ってるって言っても、所詮(しょせん)は化け物ですよね」

 青筋(あおすじ)を浮かべる町長に、若者達もまた、口々(くちぐち)に怒りを表す。


「やはり、ここで手をこまねいているわけにはいかん」

 アルゴは歩き出した。

「神の御名(みな)のもと、魔女には鉄槌(てっつい)をくださねば」


 拳を固め、奮起(ふんき)し、彼らは(とき)(こえ)をあげる。

 高まっていたフラストレーションを町人(ちょうにん)たちは爆発ばくはつさせた。


 義憤(ぎふん)に狩られ、今一度(いまいちど)いきり立った彼らを、()めるものはもういなかった。





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