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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第4話 おおかみ
24/92

24.祠(ほこら)



 ・前回のあらすじです。


 『ユノがしょに帰る』





 ・・・・・・


 アイは(ほこら)を目指して走っていた。

 あか頭巾(ずきん)少女しょうじょである。


 夜の森林(しんりん)は危険だった。

 獰猛(どうもう)怪物(かいぶつ)たちが、最も活発になる時間帯。

 ただ得体(えたい)の知れない破壊(はかい)(ひかり)を前に、今や彼らはひるみ、息をひそめているのだった。


 森の中心に到着する。

 大樹(たいじゅ)と、おおかみ(かたど)った石像がそこにはあるはずだった。


 樹齢(じゅれい)千年はくだらない木は消し飛んでいた。

 狼の(ぞう)()()微塵(みじん)になって、焦土(しょうど)のうえに散らばっている。

 頭の部分だけが奇跡的に残っていた。


 アイはそれに手を伸ばす。


『そこで何をしている』

 夜風が震えた。

 頭巾(フード)(かぶ)り直そうとして、アイはやめた。

 ()けている間に風圧ではずれてしまったままにする。


「ようすを見にきたの。心配だったから」

 一匹(いっぴき)(けもの)が少女の前にはいた。

 熊ほどの大きさもある、銀色(ぎんいろ)(おおかみ)

 毛皮と同じ色を持つ(ひとみ)が、針葉樹(しんようじゅ)をつらぬく月光(げっこう)に、ぎらぎらしている。


(まど)いの魔法(まほう)は、もう(しま)いだ。きみは帰って、逃げる仕度(したく)をするんだな』

「逃げるって、どこに」

 狼は答えられなかった。


 アイの耳は大きい。

 獣類(じゅうるい)特有の深い毛に(おお)われて、やはり動物と同じように、ぴくぴくと動いていた。


 彼女は【魔族(まぞく)】の血を引いていた。


もりを出たところで、(ひと)に見つかって売り飛ばされるのがオチよ」

『だが、ここも安全ではなくなった』

 狼はフイと背を向ける。

夜明よあけには消えることだな。人間共が、この()(じょう)じて一気(いっき)んでくる』


「出ていかないから」

 アイは宣言(せんげん)した。

忠告ちゅうこくはしたぞ』


 なぎ倒された木々(きぎ)を跳び()えて、狼は暗闇に消えていく。

 アイは足元を見た。

 石像の残骸(ざんがい)ひろいあげる。


 【フォルクス=メルヒェン】。

 古くから語り()がれ、かつては『神』にまで昇格(しょうかく)した土地とち守護者(しゅごしゃ)

 彼は数年前、自分を()した(ぞう)魔力(まりょく)を宿し、小さな森を迷路(めいろ)にした。

 それは人から排斥(はいせき)された、半魔族(ハーフ)の少女を守るためである。



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