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【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第3話 アイ
22/92

22.土煙



 ・前回のあらすじです。


 『共同墓地きょうどうぼちで、ユノがセレンからわざを教わる』






 丘のふもとに土煙(つちけむり)がのぼる。

 剣戟(けんげき)の音がする。


 オーグルの(こぶし)に、戦士の鉄兜(てつかぶと)()れた。

 (ひたい)から血を噴いて、槍使いの男が地面じめん(しず)みこむ。


 ――ユノは最前線に飛び出した。

 臆病風(おくびょうかぜ)に吹かれる身体を、セレンにおそわった(わざ)があると鼓舞(こぶ)して。


「おい、ユノ、 下がれ!」

 アドニス隊長(たいちょう)さけんだ。

 ユノは無視むしして、魔物(まもの)()れに手をかざす。

 血を(なが)して草地(くさち)に転がる(おとこ)たちに()える。


()せてください!」

 反射的(はんしゃてき)に戦士たちは()()りついた。

 ユノの手から閃光(せんこう)がほとばしる。

 青白(あおじろ)熱線(ねっせん)が、怪物たちの胴体(どうたい)を吹き飛ばす。


 光は黒い森までびた。

 轟音(ごうおん)が、よるに移行しつつある空に木霊(こだま)する。

 ぼうぼうと(しげ)密林みつりん(けず)れ、あか火柱(ひばしら)があがった。


(あっ)

 ユノは硬直(こうちょく)した。

(……あの()、だいじょうぶかな)

 (あたま)のなかにあったのは、森のおく(たす)けてくれた女の子だった。名前は確か、アイ。


魔物まものが……」

 アドニスが(かぶと)覆い(バイザー)を上げる。

 ペンドラゴン王国民(おうこくみん)にありがちな(あお)い眼には、身体の上半分(うえはんぶん)()くした怪物たちがうつっていた。


 (かぜ)る。

 化物の(むくろ)はいになる。

 空を蹂躙(じゅうりん)していた(ばけ)がらすが、逃げるようにもりのほうへ()んでいく。


 モンスターは、戦士たちの前からいなくなった。


 ぺたんと、ユノが(しり)もちをつく。

 ケガの(あさ)かった者たちが、周りで重症者(じゅうしょうしゃ)に手を()していた。


「だいじょうぶか?」

 アドニスがユノに手を向ける。

 それを取らず、ユノはこくこくと(うなず)いた。

 腰がすっかり()けている。


 アドニスは、副隊長(ふくたいちょう)の若い騎士(きし)りかえった。

怪我人(けがにん)を急いで病院(びょういん)につれていってくれ。町長(ちょうちょう)にはオレのほうから、今日はもう安全だと連絡(れんらく)れておく」

「わかりました」

 青年(せいねん)騎士(きし)は敬礼をして、負傷者(ふしょうしゃ)運搬(うんぱん)指揮(しき)をとった。


「驚いたな」

 アドニスは疲労(ひろう)()い顔をユノに向け直す。

「おまえ、魔法(まほう)使つかえたのか」

 ユノは(こた)えに困った。

「教えてくれた(ひと)からは、『(わざ)』とだけ聞いています。魔法……とはちがうかと」

「じゃあ、【気術(きじゅつ)】か」


 得心(とくしん)したようなアドニスの声に、ユノは曖昧(あいまい)にうなずいた。



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