20.魔女
・前回のあらすじです。
『ユノが食堂で、アドニス隊長から状況を説明される』
煌々と、ランプが食堂の壁を照らしていた。
食事をするユノを、アドニスの青い目が射る。
「魔女ってのは、町長によると、数年前に町から追放した魔族の母娘のことだそうだ。コルタを襲う災難は、彼女たちの呪いなんだと」
ユノは水を飲んだ。ゴクリと音がする。
【魔族】とは、怪物の血を引く生物――とりわけ人型の化け物を意味した。獣型は、ユノも知っているとおり、【魔物】と呼ばれる。
「魔族の女たちは、森のなかに今も隠れ住んでいるらしい。森林一帯に魔法が掛かっているのも、彼女たちの仕業だと」
アドニスの前にはマップが開かれていた。
コルタの手前にある樹林帯を彼は示す。
「ユノは、なんか見たりしてないか?」
【フォルクス=メルヒェンの森】は、地図上では面積の少ないフィールドだった。
「ここを通って来たんだよな? 【導きの護符】とか使って」
――【導きの護符】は、入り組んだ迷路や、魔法のかかったダンジョンにおいて、入口から出口までの順路を示してくれるお守りである。
ユノは首を横に振った。
「すみません。ボクは、特には何も……」
「……そうか」
椅子の背もたれにアドニスは体重を預けた。
ユノは袖で口をぬぐって食事を終える。
森で迷ったことも、青い石でワープをして来たことも、誰にも話さないと心に誓った。
・以下の設定をつけ足しました。
『――【導きの護符】は、入り組んだ迷路や、魔法のかかったダンジョンにおいて、入口から出口までの順路を示してくれるお守りである。』




