19.夕食
・前回のあらすじです。
『ストリートに町人がいない』
詰め所でユノは夕食を配膳された。
一階の突き当りにある、小さな食堂だ。
パンと、野菜のスープがテーブルにある。
対面ではアドニスが、今後の行動について説明をしていた。
「――これから戦闘なんですか?」
「そ。来てすぐで悪いけどな」
角ばった額をアドニスは掻いた。
パンを取って、ユノは急いで食べはじめる。
「食いながら聞いてくれ。今この町は、夕刻を境目に、モンスターの狩り場として狙われている」
「狩り場?」
「良いエサ場ってこと」
――魔物は夜行性の為、日暮れ時から運動が活発になる。
暗くなると寝床から這い出し、エサを求めて人間を襲うというのは、最近ではよくある話だった。
アドニスはつづけた。
「町や村に対する襲撃も、魔王の台頭以降は、ままあった。それでも、ここまで頻繁にってのは……」
ユノはスープを飲んだ。
なるべく早く食べて、戦う前に消化したかった。
他の席にいた戦士が言う。
「いくらなんでも、ここみたいに毎日ってのは無かったな」
旅慣れた、冒険者風の男だった。
革製の鎧を着て、使い古した弓をテーブルに立てかけている。
ユノは戦士とアドニス、どちらにともなく質問をした。
「どうしてコルタだけが?」
手袋をはめた手を組んで、アドニスはユノに答えた。
「魔女だよ」




