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18.無人
・前回のあらすじです。
『ユノがコルタの町に到着する』
「……あの、」
ユノは通りを見回した。
辺りは無人で、民家からは物音ひとつ聞こえない。
「他の、町の人たちは?」
「おうちのなかでお祈り。……言っとくけど、オレも、詰め所の連中も、この町の人間じゃない。みんなお前と同じ、よその土地からクエストを受けて来た仕事人さ」
アドニスは「王命を受けてってのは、珍しいけどな」と肩をすくめた。
ユノは町を一望する。
丘なりに段々になった街は、赤い空の下、黒い影を伸ばして聳えていた。
一番高い所にある、鐘楼のついた建物が教会堂だろう。
コルタのことは、事前にアイの小屋で学んでいた。
【金の竜】を、メルクリウスの創造主とする教え――【竜神教】。
大陸内において多くの信徒を持つ巨大な宗教だが、その中でも熱狂的な信者で構成された町が【コルタ】である。
その町民性は、異教徒や無宗教の者に対して排他的。
『教典』において、神の敵と明示される【魔族】に対し、殲滅をおこなうことを、なにものにも勝る徳とする。