17.テレポート
・前回のあらすじです。
『赤いずきんの少女・アイが、ユノに自分の存在をかくすようたのむ』
・・・・・・
西の山に日が沈もうとしていた。
丘の上で、コルタの町はひっそりとした空気を帯びはじめる。
牧歌的な入り口にユノは立っていた。
アイに渡された青い宝石を握り込み、ここまでテレポートしてきたのだった。
ぽかりと開いた門の向こうには、目抜き通りがある。
店はもう閉まっていて、露店もなく、通行人のすがたもなかった。
「よっ」
近くの建物から、ひょこりと男がひとり出てくる。
三十代くらいの、黒髪に青い目をした騎士だった。
「こんばんは……」
ユノは挨拶をした。
「こんばんは」
フルフェイスの兜を脇にかかえ、男は軽く笑う。
「おまえさん、旅の人?」
「あ、えーと。王さまから依頼を受けて、救援にきました」
「まじか?」
男はユノをためつすがめつした。
――貧弱そうな子供である。
「ま、いいか。よく来たな。オレは派遣騎士団所属のアドニス。ここでは、臨時警護隊の隊長をやっている」
手を差し出され、ユノは握り返した。
「ユノです。よろしくお願いします」
男――アドニスは、「ユノ、ユノね」と名前を繰りかえす。
「詰め所、こっちな」
通りのはずれ――門の背面に設えられた、物見台のついた建物。
四角く無骨で、どこか古臭い石造りのそれが、町に集った戦士たちの集会所であり、宿だった。