16.ひみつ
・前回のあらすじです。
『頭巾の女の子の家に、ユノがかくまってもらう』
「ユノだったわね」
少女は丸太を切って作ったイスから腰をあげた。
野暮ったいドレスをくるりと返して、質素な整理棚に歩いていく。
この家のものは、大半が彼女の手製であるらしかった。
「あなたがどういう生き方をしてきたのかは知らないけどさ。もし、戦士として生計をたてていきたいのなら、卑屈な態度は改めたほうがいいかも」
「どうして?」
宝石を少女は棚から取り出した。
「足元をすくわれる、報酬をちょろまかされる、要はなめられるってこと」
書架をなぞって、今度は分厚い本を一冊引っこ抜く。
「えーっと、その……アイさんって言ったっけ」
「呼び捨てでいいって」
ユノはこめかみを掻いた。口調をあらためる。
「その、アイはさ、どうしてこの森にいるの? モンスターの棲む危ない場所なのに」
「さあ?」
アイはテーブルに荷物を置いた。
「これは?」
ユノはゾッとするほど重量感のある書物をのぞきこむ。
対面の席で、アイが頬杖をついた。
「ペンドラゴン国の文化、風習、信仰。少し古いものだけど、参考にはなると思うわよ」
「べんきょう? しなきゃ駄目?」
「【コルタ】に行く気ならね」
ユノは首をかしげた。赤い目でアイは彼を見つめる。
「……先に釘を刺しておくけど」
アイの表情は気丈だった。
頭巾からちらっとのぞく、白くきれいな顔つきにユノはドキリとする。
少女は注意した。
「私がここにいたことは、誰にも言わないで」
・誤字脱字を修正しました。
旧→『この家の物はは、大半が(略)』
改→『この家の物は、大半が(略)』