13.コルタの町
・前回のあらすじです。
『ユノがギルドに行く』
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ゆるやかな丘の 上にコルタの町はあった。
人の世界をおさめる善神――金の竜をたてまつる、宗教色の強い小都市である。そのために、無宗教を謳う地域との摩擦も多い。
夕暮れ字が近づき、住民たちは、教区からの鐘を以て、逃げるように各々の家に駆けもどっていった。
鋼の鎧をまとった派遣騎士や、ギルドの委託で来た冒険者たちが、町の入り口に集まっている。
「王都に勇者が現われたってよ」
「まじか?」
「どんなやつ?」
「さあ……けど、これでやっと、この任務ともおさらばかな」
戦士たちはいずれもボロボロだった。
彼らは町の正門付近に設けられた詰所に駐屯し、扉やはね橋のない、簡素なつくりの門を守っている。
外周の――西の方面に築かれたスペースには、神官の置いた、墓石がひとつ立っていた。
「生き残りてえなあ」
コルタ独自の洗礼を受けていない、外部の兵たちは、不浄の者とされ、敷地内の教会墓地に弔われるのを拒まれている。
「前払いで十万メダリスは、旨すぎるとは思ったけどな」
「おい、来たぞ」
物見櫓の鐘が鳴って、騎士のひとりが、バイザーを下げた。
総勢三十名ほどの戦士が、剣を抜きはなち、槍を構え、弓に矢をつがえる。
町のなかからは、パタンパタン、と、明かり取り用――最近は外を監視する用でもある――の窓を閉ざす音がした。
「勝てますか」
集団の副隊長をつとめる男が、隊長の騎士――アドニスに言った。
「勝つのはなんとかなるさ」
前方の樹林地帯から、魔物の群れが、あふれだす。
逢魔が刻の空に、ギャアギャアと何十、何百の鴉が湧く。
それらは全て、魔に転化した動物だった。
瘴気に中てられ、本来のすがたから肥大化した怪物――【土蜘蛛】。【オーグル】。
そのうしろから、怒涛と押し寄せる、体格の変質した野犬、捨て猫、鼬の魔物。
弓兵の矢が、先行する化物鳥を撃ち落としていく。
騎士や冒険者、賦役を課された若者たちが、武器を手に手に走りだす。
化物に斬り込んでいく。
――戦いは夜までつづいた。
その日の死者は、十五人だった。