12.ギルド
・前回のあらすじです。
『ユノがモンスターと戦う』
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当初、【コルタ】の町への出発は、武器を購入した次の日に設定していた。
しかし王都を出てほどなくして、【ピース・メーカー】と呼ばれる魔性の鳩に襲われ、あえなく撤退。
ひとりでの旅は困難と判断し、別れ際に妖精の言った、【冒険者組合】をたずねることにした。
もっとも、ユノには自分から人に声をかけるだけの度胸がなく、あらためて、単身での旅を決意。
ギルド職員から、目的地に行くための推奨レベルと、戦闘訓練のコツを学ぶのだが――。
ギルドで、ユノはそのほかにも、冒険者としての基本を教わった。
――冒険者は、町の便利屋であると同時に、盗掘屋でもある。
ギルドに寄せられる、一般の市民では達成困難な業務を請け負ったり、そうした『依頼』のない時には、大陸中――場合によっては、世界全土――を遍歴して、廃墟化し、化物の巣となった古代の建造物や洞窟に、宝を求めて入っていく。
【魔王】という、怪物を統べる存在が勢力を得てからは、冒険者の仕事も、弱小国家や、戦力のとぼしい町や村への派遣が主流になった。
それでも、一攫千金や、英雄への出世を夢見て、ボスモンスターの根城攻略に仕事をしぼる業者は多い。
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城下町のメインストリートを、ユノは歩いていく。
ギルドの本部は、王都の中央広場に建っていた。
赤い屋根の大きな建物で、正面玄関に、ペンドラゴン王国のシンボルである、竜と剣をからめた意匠が彫られていた。
両開きの扉をくぐって、ユノは、なかに入る。
一階は、依頼や換金を求める人たちでごった返していた。
待合用のテーブルは、もうすぐ日暮れ時ということもあってか、酒や食べものを持ち込んだ戦士たちで、居酒屋の様相を呈している。
部屋のすみには、腰ほどの高さもある、盃状の水鏡があった。
壁沿いに水鏡のほうへと移動し、ユノは静かな水面をのぞきこむ。
ぴたりと止まった透明な水の表面に、ギルド登録時にもらったバングルをかざす。
白い光がパッと散って、腕輪に嵌まった、石の数字が変わった。
【13】から、【14】へ。
(まるでゲームみたいだ)
ユノはふと、懐郷めいた気持ちになった。
もとの世界での生活――それを思い出すことはない。
だが、彼はふとした瞬間に、メルクリウスでは聞かない観念を想起することがあった。
そしてその時には決まって、この世界に来たことに、一定の喜びと、大きな安堵を覚えるのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。
※いくつかの表現を修正・加筆しました。(以下は、加筆した文章の一例です)
『もっとも、ユノには自分から人に声をかけるだけの度胸がなく、あらためて単身での旅を決意。(中略)コツを学ぶのだが――』