11.大平原
・前回のあらすじです
『ユノがひとりになる』
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王都の西に広がる大平原――【ドシロト平野】で、ユノは狩りをしていた。
日は中天を過ぎて、気温は肌を焼くほどに暑い。
――セレンと別れて、一週間ほどが経っていた。
黒毛の狼が、グルグルと唸る。
正式名称を【ベオウルフ】という、中型犬サイズの獣は、戦闘初心者でも遅れをとることのない怪物だった。
後肢をバネに、狼がユノに飛びかかる。
がちっ!
と閉じる顎を、ユノは身をかがめて避けた。
防護用の服が、肩の部分だけ持っていかれる。
すれ違いざまに、剣を振りぬく。
獣の胴体を、一刀両断する。
上下に分かれた狼の身体から、臓物が散って、地面に落ちた。
死体がザラリとくずれ、灰になる。
その灰もまた、間もなく消滅する。
あとに残ったのは、紫の宝石だった。それは換金用のアイテムで、メルクリウスでは、【ジェム】と呼ばれている。
冒険家や戦士稼業を営む者たちの、主な収入源である。
また、日用品から、高度な武器や防具の材料と、幅広く使われる、神秘のちからをやどした鉱物でもあった。
(これをギルドに持っていって……あと、もうすこし強さを上げたら、【コルタ】に行こう)
ユノはジェムを回収して、城下町に引きかえした。
※名称のまちがいを修正しました。
・誤→『トーシロ平野』
・正→『ドシロト平野』




