表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第1話 ユノ
1/92

1.剣と魔法の世界



 ※注意ちゅういです。


 〇このものがたりは、作者『とり』の腕試うでだめしを目的もくてきとして書かれた小説しょうせつです。「どこまで継続けいぞくして出せるか」に重点じゅうてんいているため、なかみがすっからかんになる可能かのう性が、きわめて高いです。

  (※なるべくおもしろさを追求ついきゅうする所存しょぞんですが、保証ほしょうはできません)


 〇以上いじょうの点に抵抗のあるかたは、【移動】をおねがいします。

 (もしてくださるかたでも、ご不快になられたさいは、すぐに閲覧えつらんをやめることをおすすめします)







 深い(みず)のなかに彼はしずんだ。

 ごぼごぼと泡が吹き出す。

 えない糸に引かれるように、水面(みなも)がる。


「たす――助かった」

 かおを出して、少年しょうねんは空気をもとめた。腕で水をかいて、(きし)およぐ。

「『助かった』?」

 日差しが森を照らしていた。(そら)あおく、(ひる)らしい明るさだった。(かぜ)があって、木のっぱがザワザワれた。


(あれ?)

 少年しょうねんは、自分のくちに手をてた。

(どうしてボク、『助かった』なんて言ったんだろう?)

 頭上ずじょうからキレイな声が降る。

「なにかから逃げていたのですか?」


 よくわからない。少年には(おも)い出せなかった。

「とりあえずは、『ようこそ』と言うべきなのでしょうね」

 (しろ)い手を女性じょせいが差し出した。それを少年は取って、陸にあがる。


「ここは? ――あの、あなたは?」

 『あなた』という言葉ことばを、彼ははじめて使った気がした。それほどまでに、おんな神秘(しんぴ)的だった。


「私はセレン。妖精(アールヴ)族の(おさ)です。以後、お見知(みし)りおきを」

 色の白い、なが萌黄(もえぎ)色のかみと、みどりを持つ女性だった。ほそい長身ちょうしんに、うすいワンピースドレスを着て、ブローチで留めたみじかいマントを羽織はおっている。

 としは不明ふめい十七じゅうなな才か、十八じゅうはち才ほどの見たをしている。みみは長く、先がとがっていて、イヤリングを吊っていた。


「どうも……」

 あたまを下げ、少年は立ちあがった。

「えっと、ボクは……」

 彼は名前なまえを云おうとしたが、わからなかった。手掛りを求めて、れた着衣(ちゃくい)をたたく。むねのポケットに感触かんしょくがある。


 ――〈生徒手帳(せいとてちょう)〉――。


「あの、ボクは……。『幸村 望』です。……『十六才』」

 短い黒髪くろかみと黒い目の、地味じみ風采(ふうさい)。さえない〈証明写真〉のよこに書かれた『名前(なまえ)』と『年齢(ねんれい)』をみあげる。

 『私立(しりつ) 聖竜高等学校せいりゅうこうとうがっこう』在籍。『一年(いちねん)C(ぐみ)所属しょぞく


「ゆきむら……。ユキムラ・ノゾムですか。では……」

 女性――セレンは(つえ)を振った。不思議な文字になって、少年の名前が浮かびあがる。光のつづり(スペル)は、いくつかをのこして消えた。


「この世界では、『ユノ』と名乗なのっていただくことにしましょう」

 おともなくセレンは微笑ほほえんだ。

本当ほんとうの名前は、帰る時にまたお返しします」


 ――帰る。

 その選択肢が、少年にはなにか、おそろしいことのように思われた。


「あの……。ここは? どこなんですか?」

「アヴァロンの(いずみ)

 草地にぽかりとできた、まる水辺みずべをセレンはゆびさした。

「私たちの世界――メルクリウスにおいて、救世主を召喚(しょうかん)する神聖な場所ばしょです」

「きゅ……」

救世主(きゅうせいしゅ)


 彼にセレンは言いきかせた。お辞儀をする。

あらためて。ようこそお越しくださいました、水の惑星(アース)勇士(ゆうし)。どうかそのおちからで、我が世界をおすくいください」

 森は息をひそめたようにしずかになった。

 そらおおきな動物が飛んでいく。


「わ……」

 妖精(ようせい)の女の言葉を、彼は半分はんぶんも理解していなかった。ただ「帰りたくない」という気持ちが、彼に返事をさせた。

「わかりました……」


 ここがどんなところなのかはわからない。

 まえにいた場所が、どんな世界だったのかはおぼえていない。

 けれど、


 誰かに必要(ひつよう)とされたのは、はじめてのような気がした。









 ・いくつかの誤字・脱字・表現ひょうげん修正しゅうせいしました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ