俺のチートスキルは「クレクレ」です
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あとがきで、ポイント、ブクマの催促をする行為、それは「クレクレ」と呼ばれている。
「俺はこんなことをしてまで小説を書きたかったわけじゃないんだ……。すべては神様の恩恵のせいなんだ……。」
そう、呟きながらも、クレクレを書く手が止められない。
なぜなら、俺のチートスキルは、「クレクレ」なのだから。
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俺の名前は呉暮太郎。ライトノベルを愛する普通の高校1年生だ。
ある日、ホームルームの最中、クラスの中心部が光って、魔法陣が現れた。ライトノベル読者の俺にはすぐにピンときたね。これは集団異世界転移だって。
想像した通り、俺を含む30人のクラスメイトたちは、白い部屋に飛ばされた。神様を名乗るサンタクロースっぽいおじいさんから、それぞれチートスキルを一つもらって、異世界に転移することになった。
剣と魔法の異世界にはレベルの概念があって、当然魔物もいる。魔物を倒すとレベルが上がって強くなる。
ここまではよくある話だ。
神様が言うには、異世界転移した俺たちの使命は、魔王の討伐とかじゃなかった。異世界転移の経験を生かして、面白い小説を書くこと、それが俺たちの使命だった。
は? って感じだろ。
神様が運営している小説投稿サイト「転生をしよう!」をもっと盛り上げるため、リアリティのある作品を求めているそうだ。
俺はライトノベルを読む方だけど、書いたことなんてなかった。他のクラスメイトも同じだと思うが、チートスキルももらったし、きっとリアリティのある面白い小説が書けるだろう。
ちなみに、神様は小説投稿サイト「転生をしよう!」でもらったポイントも経験値になるようにしてくれたそうだ。魔物を倒さなくてもレベルアップは可能らしい。
神様は説明が終わったら、転移場所の希望を聞いてくれて、ある程度配慮した場所に飛ばしてくれた。
俺は友人の重石老平、誤字大野丞、ヤン・キーの3人と一緒に、比較的安全な森の中に転移させてもらった。町も近いから、魔物を狩ってから冒険者登録しに行くつもりだ。王道展開だろ?
まばゆい光につつまれて、転移が完了すると、そこはまさにテンプレ異世界という感じだった。目の前には一匹のゴブリンがゴブゴブしていた。俺たち4人はゴブリンを囲んでタコ殴りにし、初めての戦闘を終えた。倒されたゴブリンは、霧になって消えて、ドロップアイテムである魔石だけが残った。
神様が高校生である俺たちに配慮してくれたのか、剥ぎ取りとかが必要な世界じゃなくてよかった。
周りの安全を確保した俺たちは、それぞれのチートスキルを教え合うことにした。
重石は「最高のプロット」だった。帽子をかぶった神様並にアイディアがどんどん湧いてくるらしい。なにそれうらやましい。
誤字のチートスキルは「執筆スピード10倍」だった。早さは力だ。たまに小説サイトも読んでいた俺にはわかる。毎日更新する作品と、月一回更新する作品、どちらがランキングに長く顔を出せるかを考えれば、驚異的な能力だ。
ヤンのチートスキルは「バトル描写の才能」だった。ヤンは中国からの留学生であり、八極拳の師範代の息子でもある。普通にケンカが強いし、こいつ小説を書かなくてもこの世界で生きていける気がする。
俺のチートスキルは、といえば「クレクレ」? なんだろう、これ。
説明を読むと、ポイント下さい、ブクマ下さいと後書きに書いたときに成功率が極端に上昇するスキルっぽい。邪道過ぎない?
っていうかさ、魔物とかがいる剣と魔法の世界に飛ばされたっていうのに、チートスキルは全部小説関係じゃねえか。殺す気か。
まあ、面白い小説を書けばレベルが上がるってことだし、そう言う意味ではバトルしなくても強くなるからいいのかな。
それから俺たちは、(主にヤンの活躍で)襲ってくる魔物をボコり続け、ある程度の魔石を稼いだあと、町に向かった。冒険者ギルドにも登録し、魔石を換金したから、一週間分の宿代を確保できた。これからは宿で小説を書きつつ、冒険者として成り上がっていくぞ!
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神様の計らいにより、小説を書こうと思った時にはノートパソコンがどこからともなく現れる。ネットで調べものもできるし、もちろん「転生をしよう!」への投稿もできる。
2日後、小説の序盤を書き終わった俺は、「転生をしよう!」に第一部分を投稿した。
翌日、作者ページを見てみたが、ブックマークもポイントもゼロだった。
めげずに続きを投稿した。
翌日、作者ページを見てみたが、やはりブックマークもポイントもゼロだった。
めげずに続きを投稿した。
翌日、作者ページを見てみたが、やはりブックマークもポイントもゼロだった。
ちょっとめげた。
他のクラスメイトはどうなっているのかな、とランキングを見てみる。
「は?」
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日間総合ランキング
1位 VRMMOの世界に飛ばされた俺、クソスキル「小説を書く」が思ったよりチートだったため、無双してしまう / 誤字大野丞 ハイファンタジー/ファンタジー
2位 悪役令嬢になっちゃった。助けて! / 今八紀 異世界[恋愛]
3位 古今無双の反射使い / 重石老平 ハイファンタジー/ファンタジー
4位 異世界転移とかよくわからないヨ、なぐればヨロシ? / ヤンキー ハイファンタジー/ファンタジー
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5位以下にも、同級生の名前が並んでいる。
とりあえず、見覚えのある名前の作者の作品を順番に見ていく。
1位は一緒に転移してきた誤字大野丞の作品だ。誤字のやつ、名前の通り誤字がクソほど多いが、もう100話も投稿している。10倍早く書けるとかいうチートスキルがあるにしても、書くのが早すぎるだろ。どうなっているんだ。
2位の今八紀も、クラスメイトの一人である。三つ編み眼鏡で地味目にしているが、男子から隠れて人気のあった女の子だ。試しに異世界[恋愛]ジャンルのランキングを見てみると、ぶっちぎりで日間1位を獲得している。
やけに王宮の描写がリアルだし、もしかして、神様に王宮近くに転移させてもらったのかな。本当に悪役令嬢をやっていたりしないよな?
とりあえず作者をお気に入り登録しておいた。べ、別に今さんのことが、き、気になるとかじゃないんだからね!
3位は重石の作品で、チートスキルのおかげか、本人の才能なのか、めちゃくちゃ面白い話を書いている。まだ2話なのに、ここまで引き込まれる作品はなかなかない。俺も思わずブクマしてしまった。
4位のヤンの作品は、勢いがあるものの、話に矛盾がいっぱいあるし、主人公以外の登場人物にもあまり魅力的なキャラクターがいない。いや、これ多分、俺たちを元にしているから俺たちに魅力がないだけか?
ただ、戦闘描写は圧倒的に迫力があり、それを読むためだけにブックマークをする価値がある。思わずブクマしてしまった。これがチートスキルの力か。
ランキング上位に並ぶ29人の同級生たちを見て、俺は焦った。
俺の小説はいまだブクマ0、評価ポイント0の正真正銘ポイント0である。
これはあまり頼りたくなかったが、チートスキル「クレクレ」を使うしかないのか?
次の投稿から、俺は「クレクレ」を使うことにした。
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病気の兄を元気づけるために、俺に小説家として生きていけることを証明したいんです!
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「主人公かっこいい!」
「けもみみヒロイン最高!」
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「ざまぁ最高!」
「良い世来いよ!」
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俺は毎回、クレクレを書くようになった。
すると、少しずつポイントが入るようになった。
ポイントが入ることで、俺自身のレベルも上り、冒険者業も少しずつこなせるようになってきた。昼は冒険者として宿代を稼ぎ、夜は執筆活動をする。
俺と重石、誤字、ヤンの4人は時にパーティを組み、時にソロで、冒険者業をこなしつつ、小説執筆のライバルとして競い合った。
クレクレのおかげか、日間ランキング6位まで来た。
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クレクレは有能なんだが、たまに「つまらない」「反射使いのパクリ」「殴ればヨロシの方が面白い」「クソ小説がランキング上位とかどうせ複垢だろ不正乙」などとコメントがつくことがある。
そういう時は落ち込むが、コメントを削除してブロックだ。
それ以外できることはない。
複垢を使ったポイント水増し不正ではないが、クレクレがチートスキルであるため、不公平だと言われれば不公平かもしれない。
小説サイト「転生をしよう!」では、ただ面白い小説がかけるだけではだめで、ポイントの取り方を、マーケティングを、戦略的に行えた者がランキング上位になれるのだ。クレクレも戦略の一つである。俺のはチートスキルだが。
実際、クラスメイトの中で、重石の作品『古今無双の反射使い』がどう考えても一番面白いが、今は月間ランキング7位である。上の6人ももちろんクラスメイトである。
最終的には、更新速度が圧倒的な誤字の作品と、クレクレが日に日にうまくなってきた俺の作品、どちらかが総合年間1位を取るだろう。
重石が30話まで更新した頃には、誤字は654話まで投稿している。マジでこいつの執筆速度はなんなんだ。
ちなみに俺は50話まで投稿済み、今さんは42話投稿して完結済みである。ヤンは20話で完結、新しく現実世界でのバトルものを書いている。ヤンはもはや異世界来た意味なくない? 地球に戻してあげた方が良くない?
誤字と今さんはそれぞれ書籍化の話が来たらしい。俺たちもう異世界人なのに書籍化してどうなるというのか。謎である。神様(運営)が何とかしてくれるのかな。
異世界転移して1年を目前にした最後の月曜日、明日は年間ランキングの更新日だ。
今日もクレクレを書く。
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この作品が年間ランキングになったら、俺は魔王も倒せるし、読者のみんなに恋人ができるし、宝くじも当たると思います!
ぜひ、よろしくお願いします!
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3日後、神様から使命だとは言われてはいないけど、ちゃんとこの世界に存在はしていた魔王との戦いに行った。魔王はワンパンで倒せた。
こうして俺は今日もそこそこの小説を書いてはクレクレをして、ポイントを稼ぐ日々を続けるのだった。
完
別の小説を書いていたはずが、気が付いたら書き終わっていました。
クレクレ? そんなことしませんよ。