表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕が異世界に行きたい理由

作者: 中二病患者黒歴史

生きる理由がない。

なんのために生きているのか。

生きることに意味なんかない。

いわゆる中二病患者と言われる思春期に発症する精神状態を当時から10年以上たっても患っている。

痛々しい。気持ち悪い。


どうして自分はまだ生きているのかと思う。毎日意味もなく働き、食事をし、眠る。無意味に生きているという感覚を誤魔化すために、アニメを見たり、ゲームをしたり、ドラマを見たり、映画を見たり、少しは何かが進んだという意味を見つける。


起伏の少ない感情に、起伏をつけるための情報を外から摂取する。

感情がない、なんてことは言わない。嫌なことは嫌だし今すぐにでもここから逃げ出したいと思う。腹をたてるときは腹をたてるし、面白いものを見て面白いと思うし、何気ない会話で笑うこともあるし、悲しい出来事があれば、泣く。

ただ、全てが外因なだけ。貰ったものに反応しているだけで、自分から発していることがほとんどない。

泣く理由も、笑う理由も、苛立つ理由も。


何かをして、失敗する。怒られる。

どうしてそんなミスをしたのか、ただ気付いて一言確認すればいいだけなのに、その一瞬の気付きが流れていく。どうしてそこで止まらないのか、何十年生きてきてなんでこんなことすらできないのかと辛くて、情けなくなる。

怒られることに、返せるような言葉は何もない。ただ、どうしてと自責の念に苛む。

同時に、どうしてこの人はこんなに怒っているのかと不思議になる。この人が怒っても出来るようになる保証なんてないのに。被害を被ったから腹を立てている、というのは理解出来ても、だから怒るという感覚に結びつかない。怒るというのは疲れるじゃないか、という感覚。苛立つのは気分が悪い。だから、さっさと忘れた方がいいのに。わざわざ怒って無駄に体力を使い印象付けて思い出しやすくする。

意味がわからない。

それが羨ましい。


必死になれるのが羨ましい。

毎日、一つ一つ、しっかり気にして感情的に、必死になれるのが羨ましい。

アニメや、ドラマなんかに求めているのはそれだと思う。

復讐に燃える誰かの怒りを共有したい。

恥ずかしいほどの誰かを好きになる思いを共有したい。

死にたくなるほどの誰かの悲劇を共有したい。

涙溢れる誰かの喜びを共有したい。

全て、自分では体験できないことだから。

そこまで必死になるなんて恥ずかしい。

でも、羨ましい。


だからそれらを外から摂取して、自分には何もないということを誤魔化す。

毎日を誤魔化す。

誤魔化し生きて、ふと、思い出す。

自分には何もない。


必死になる程やりたいことなんてない。

趣味も誤魔化しの一つでしかない。

生きるだけなら適当にしていれば良いだけの日本で。

生きることすら必死になれない日本で。

明日も生きれない不幸な人達がいるんだから、そんな日本が幸福出ないわけがない。わがままだ。傲慢だ。そんなこともよく聞くけれど、本当にこれが幸福か。

生きたくても生きれないのが不幸だと言うのはその通りだと思う。たった今強盗なりに殺されかければ死にたくないと思うだろう。べつに死にたいとか生きたくないなんて言っているわけじゃない。こんな惰性な生き方が嫌なだけだ。


じゃあ自分から動け。自分から変えようとしたら変えられる。なんて話もよく聞く。

趣味に生きる。家族を作る。人助けをする。海外に行ってみる。

そうしたところで何かが変わるかなんてわからないからやる意味がない。結局わがままなだけ。絶対を求めて欲しいものが手に入らなければ嫌だ。せっかく少しは頑張ったのになにもなかったじゃないか。


面倒くさい。

動きたくない。


何かが変わって現状から抜け出せるかもしれないけれど、もっと嫌なことがあるかもしれないから嫌だ。

やりたいことをやる代わりにやらなくちゃならなくなることが出来るかもしれないから、それなら今のままで良い。

わかってる。だからダメなんだってことはわかっている。

でもなかなか動けない決心がつかない。

何かをやらなければという焦燥感だけが募る。

変わらなければという焦燥感だけが募る。


強制的にやならければならないという状況を期待している。

強制的に状況が変わる何かを求めている。

非日常を求めている。


例えば事故にあって入院する。

例えば災害に巻き込まれる。

例えば戦争が起きる。


死ななければ最悪多少の障害が残って良いと思っている。

そうすれば自分が普通ではないという免罪符が出来ると期待している。

いっそのことこんなことを考えている自分が精神障害者だと診断して欲しいと思ってすらいる。


自分が何かをしたんじゃない。

自分から何かをしたいんじゃない。


理由は常に外に。

自発的な意思はない。

何かが変えてくれないかと期待している。変えてくれれば自分は変われるんだと期待している。

変わる保証なんてどこにもないけど、自分から動いたわけじゃないから、変わらなかった時は何かのせいにできるから。

失敗しても、急にやれとか言われても無理だと言い訳が出来るから。


だから、変えて欲しい。

自分ではない何かが変えて欲しい。

自分が何かするための理由となる何かが欲しい。

理由が欲しい。


いつも理由を求めている。

必死になる理由を求めている。

行動する理由を求めている。

やらない理由を求めている。

変わらない理由を求めている。

世界に理由を求めている。

生きる理由を求めている。


ここでは理由が見つからないから。

異世界に理由を求めている。





















異世界になんて行けるわけがないんだから。

だから僕は、トラックにでも引かれて異世界に行きたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ