おまけエピソード:夏のカレーは幸せの匂い!?広い世界のどこかにいるあなたへ、暑中お見舞でございます!
本編を読んでここまで覗いてくださった方も、いきなりこちらを読んで下さっている方も、まずはご訪問ありがとうございます。
ネタばらしをいたしますと、本編のヒメちゃん、実はこちらと全くもってテイストの違う長編(→)のヒロイン、リジーちゃんの前世なのです。
→『異世界転生して極悪最凶の変態を目指しましたが、結局は普通のお色気作家になりました』(https://ncode.syosetu.com/n3572fk/)
前世のヒメちゃんとは性格も考え方も違う子ですが、それでもいいよー、という心の広い方は読んでやって下さいませm(_ _)m
ヒメちゃんのイメージを崩したくない方にはオススメしません。ほんと。
さてこうして転生後18年、結婚後2年目の夏を迎えた私ことエリザベート・クローディス伯爵令嬢。
なんとなんと!
妊・娠。しております!
ほらーもう臨月も近いですよ。
生温かい眼差しで、膨らんだ腹をじっくり視姦などしていただきたいものです。うふふ(幸せ笑)
前世は日本の基準でいえば……今、8ヶ月?くらい。
(姫始めですかって?ご想像にお任せします♡)
予定は10月で日にちは不明。
前世よりもその辺り若干ふんわりしている、ここルーナ王国なのです。
けれども!
妊婦が食事と運動に気を付けた方が良いのは、前世も今世も同じ、でございます。
そんなわけでリジーちゃんが挑戦しましたのは……
ででででんっ!
カレー!
なのですよっ!
お野菜とお肉と我が家のお庭のハーブをたっぷり入れて、ダフネス港西口市場にわざわざ行って調達したスパイスで仕上げております。
ルーナ王国にはカレーないので、スパイスの調合から始めて玉ねぎのみじん切りを飴色になるまで炒めて、小麦粉とバターを追加してまた炒めて……
と、前世と比べればひと手間もふた手間も追加!なのです。
「んー前世以来の、夏の匂いぃぃ♡」
開け放した窓からは、明るい夏の空。
ゆっくり鍋をかき混ぜまれば、風に乗って漂う夏薔薇の香りにカレーの匂いが被さります。
うっとり。
「なんですかソレ」
愛しい旦那様のシドさんが、後ろから覗き込みました。
不気味なものを見たようなお顔をしていても、美青年でいらっしゃいます。
お胸にキスしちゃいますよっ、うふふふ(笑)
と、シドさん身をかがめてお口にキスを返してくださいました。
あーんど、ひざまずいて大きくなったお腹にもキスして、耳をつけて心音?だか胎動?だかを確認しておられるもよう。
はぁぅぅぅぅ♡
頭なでなでしてあげちゃいますっ。
煮込んだカレー並にトロトロになっちゃいますよリジーちゃんたらっ、もうっ!
と、ひとしきり暑苦しく仲良しさんした後で、さて。
「暑い日に食欲が出る薬膳です」
ジンナ帝国料理風に、鍋の中身を解説してみるリジーちゃん。
「……見たことないですが」シドさん首をかしげています。
「そもそもお嬢様が料理って」
「うふふー昔、したこともあったのよ」
転生前ですけどねっ。
転生前の記憶といえば、以前はあまり良いものは蘇ってこなかったのですが。
どうしてだか、赤ちゃんがお腹に来てくれてからは少し良い夢も見るようになったのです。
そうなのです。これまでずっと『前世=最悪』だと思っていた、のですが!
改めてその男の子とのことがフラッシュバックしてみると。
そう、悪いことばかりでも無かった、ような……?
少なくとも、彼は私のことを守ろうとしてくれていた。
私のために、怒ってくれた。
もしもあの頃に私の心がもっと前を向いていたなら、彼がどれほど優しい気持ちを持って接してくれていたか、ちゃんと分かったのかもしれない。
「ちょっとカッコよくてちょっと可愛い男の子にね、作ってあげたの♡」
「誰ですかそれは」
おおっヤキモチですね、シドさん♡
「うふふふー名前も心もね、すごくキレイな子」よく考えたら、ちょっとシドに似てるかもしれません。
いえまぁ、ウチの旦那様の方が、だいぶ変態ですし黒いですけどねぇっ!?
「すごく喜んで美味しいって食べてくれたから、味は保障しますわよ?」
とっても美味しそうな匂いですしね!
「そうですか……俺はこっちの方が好きですけどね」
「あっ……」
シドさん、まさかのうなじチューでございます。
「ぁぁぁぁんっ……ダメっ」お耳甘噛み攻撃はいやぁん!なのですっ!
「赤ちゃん出ちゃうからっ!」
「どんだけ感じやすいんですか、お嬢様」
何を嬉しそうにっ。
イジワルですねぇっもうっ!
「もーいい!悪いお父様にはカレーあげませんからね!」
リジーちゃんプンスカ、なのです!
が。よく見ると。
シドさんからも黒いオーラが噴出してますよ!?
「半年以上も禁欲してるところに、ほかのヤローのことを持ち出すからですよ」
「ヤローって。ひとの大切な思い出をっ」
「それ以上おっしゃるなら、もう1度お耳攻めますからね?」
困った。嫉妬が気持ちいいぃぃぃ♡
でなくて。
「あのね」シドのお胸にコツンと頭を持たせかけます。
ふっ、イジワル攻撃には甘え甘え返しですよ、どうだっ!
「あの子のおかげで、シドさんの気持ちがちゃんと分かったんだと思うの」
思い出したのは最近だけれど、なんていうのかな。
心の奥底に、楓くんがくれた温かい優しい気持ちが、ちゃんと、ずっとあったような気が、するのです。
「へぇーそうなんですか」
「ありがとう。ずっと好きでいてくださって」できたてのカレーをスプーンですくって、ふうふう冷まして、あーんとお口に放り込んであげます。
「愛してるわ」
複雑な表情でモゴモゴと味わった後、ゴクンと飲み込むシドさん。
「辛いけど、なかなか美味いですね」
瞳が蕩けていますね、良かった!
ルゥから手作りのリジーちゃんカレー、一票獲得ですっ!
「では今日のお昼は、皆でカレーパーティーね?」
ナン風焼きたてパンもスタンバイOK!
シドさんに両親にナターシャにファルカにエデルベンノさん始め使用人の皆さん、お世話になってる大好きな人たちと食べるカレーはきっと最高!なのです。
「今度ジグムントさんとユーベル先生のところにも作りに行こうかしら」
「やめてください」
シドさんったらヤキモチさんですねぇっ!
そこがまた可愛いんですけどねっ♡
ニコニコと皆さんの分のカレーをよそうリジーちゃん。
人数分だけ強くなる、ふくよかでスパイシーな香りの中で、そっと祈ります。
―――今もどこかにある地球に住んでいる、優しいあなたが、愛する人に囲まれて、幸せに暮らしていますように―――
読んでいただきありがとうございました!
とりあえず、リジーちゃんのお話のリンクも下に貼っておきます。
もし寄ってみていただけたら、有り難くて尻尾フリフリいたします(笑)




