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私の父  作者: 雪焼
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2歳の私と母

社長と母と、私。

3人の奇妙な距離感ある生活。

今思えば、母が唯一”女”として過ごせた時間だったのだろうか。


母の子育ては

現代なら褒められたものではなかっただろう。


自分の勤めるスナックに連れて行き、

自分の男の家に連れて行くことなんて。


だが私にはそれこそが日常で生活なのだ。


食べるものに飢えることもなく、

母の上手な愛想笑いも見なくていい、

そして何より、母が安心した顔で寝ているのが見れたから。


母と私の家で、母が寝ているのを見たのは

母が風邪で寝込んでいる時だ。


正確に言えば、私の記憶の話というより

母から聞いた話なのだ。


ある日

私は母が苦しそう寝てたという記憶があると言ったら

母がその時のことを話してくれた。


その日は私と暮らし始めて

最大に体調が悪かった日の事だそうだ。


熱がすごく、体の節々が痛く、重い。

病院にも自分では行けず

頼れる人も居ない日だった。


当時の私は2歳になるかならないかくらいで

横でスヤスヤと寝ている。


そのまま気絶するように寝たそうだ。


少し熱が引いて来てトイレに行こうと起きると

私が寄り添って寝て居たらしい。


すぐに横の布団に私を戻し、トイレへ。

帰ってくるとまた母の布団に私が寝ている。

仕方ながないので同じ布団で眠る。


寝始めてどのくらい経ったのか、わからない。

母は自分の顔に水が垂れて来たのがきっかけで起きる。

母「え!?水漏れ!?」

当時住んでたアパートはボロく水漏れしてもおかしくはなかった。


だが、水漏れではなかった。


垂れて来た水は横で一緒に寝てたはずの私の涙だった。


声を押し殺し、涙だけが流れている。

泣いているせいか母が起きたことに気づいて居ない。

もちろん記憶にもない。


母は驚いたそうだ。

2歳になるかならないかくらいの私が母に気遣い声を押し殺して

母親が死んでしまうんじゃないかってくらいに涙を流している。


母「雪、おいで」

母が声をかけると声を出さずに近づいてくる。

ぎゅっとされて安心したのか力んでた体の力が抜けて行き、そのまま眠る私。


どれだけ怖かったのだろう。

生まれた時からあまり泣かない子だった。

夜泣きも少なくて心配だったそうだ。

無駄な気もせず、7ヶ月には歩き始めて手のかからない子だった。

だからこそ驚いたと話してくれた。


母の記憶の中でこの出来事はすごく印象的だったそうだ。

”この子には私しか居ないだ”と改めて意識した日だったそうだ。


調子が戻りご飯を作って居たら

起きた私が駆け寄って来て抱きつき「おはよ!」。


これからも一緒だと守って行くと決めたという出来事だった。


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