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五限目の異変

昼休み、俺は気持ちの整理がつかない状況だった

「ーー……くん、零くん!!」

「ーーッ!え?なに?」

「ずーと考え事してるのか分からないけどボーとしてたよ?」

俺と十華は向かいあわせでお昼を食べていた

「あ、悪い」

「全く四限中心配だったんだから、神田くんに聞いた時はビックリした、サッカーボールが顔面に当たって鼻血出して倒れた、て聞いたから」

「………」

「ちょっと!聞いてる?」

俺が窓の外を見ながら保健室であった事を考えていると十華が両頬を両手で挟み俺の顔を十華の顔と見つめあわせた

「わ、悪い」

「もうずっとそれしか言ってない、どうしちゃったの?頭打った?」

「そんな訳…、大丈夫だ」

「まぁでも鼻血だけで良かった」

十華は笑って手を離した

ーーー『十華が怪しい』ーーー

ふと俺の頭の中で保健室のノートに書いてあった事を思い出した

俺は一応聞いてみた

「なぁ、十華」

「ん?なに?」

「俺、一度鼻を折った事があるんだけど知ってるか?」

嘘ではない、確かに繰り返している時間の中では保健の先生から聞く限り俺は何回か鼻を折っているらしい、しかし繰り返している時間以外では鼻を折った事は一度もない、すなわち今回は鼻血で済んだ、なら俺は鼻を折った事は『無い』

十華は俺の顔を数秒見つめて首を傾げた

「鼻?折った事は一度も聞いてないよ、あ!もしかして鼻血じゃなくて折っちゃったの!?」

十華は焦りだして俺の鼻の心配しはじめた

見るからに十華はこの繰り返している時間の事を知らないらしい、いわゆる『シロ』

残るは二人、『可美奈』と『保健の先生』

可美奈とは今日の朝しか会話してない、まだ分からないが現状で考えるならば保健の先生が怪しい

しかし、先生は俺に協力的でなおかつ解決法だと思われる案を提示してきた、この繰り返している時間の犯人、原因とは考えにくい

「零くん大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だよ、鼻血だから」

「もう、ビックリしたじゃない、いきなり折ったとか言い出したから本当は折ったかと思ったじゃない!」

「大丈夫だって、俺は一度も折った事はないから」

「え?……」

「……え?」

「「…………」」

十華が驚いた顔で俺を見た、そして俺と十華の会話に間が空いた

「な、なぁ十華…」

俺が十華に聞こうとしたらチャイムが鳴った

「ーーあ!次の授業の準備をしなくちゃ、じゃ、じゃあまたあとで」

十華は急いで俺から離れて自分の席に座り次の授業の準備をしていた

「(な、なんだよ、さっきの驚きは…、おかしいだろ)」

俺は一滴の汗が流れた

「(十華は何か知ってる?いや、そんなはずはない、だって最初に聞いた時はあんなに取り乱していた、じゃあ最後の驚きはなんだ)」

十華を見ると少し申し訳なさそうな表情をしていた


五限目は美術

教室で美学を学ぶ授業だった

美術の先生は黒板に何枚かの昔の美術作品の写真を貼りながら授業していた

俺は十華を観察していた、十華は授業が始まってからずっと見向きもせず集中していた

ーーー『十華は怪しい』ーーー

再び頭の中でその事が思い浮かび上がった

「(いや、決めつけるのはよくない)」

俺は首を振って十華を怪しむ考えを振り払った

「(とりあえず授業に集中集中……)」

目線は黒板に戻して授業に取り組んだ、先生が黒板に書いたものをノートに写すためにノートを広げた

『保健室で見ただろ俺』

今日の分の新しいページの始めに書かれていた

「(やはり今まで俺は必ず保健室で見る事になってるのか……)」

分岐点とまでは行かないが必ず俺はサッカーボールに当たり必ず保健室に行ってノートを見る運命になってるらしい

『もう知ったのなら簡潔に話を纏める』

文字だけ見ると俺じゃない人が書いている感覚だった、なぜなら俺はこんなこまめに書かないからだ、しかしここまでこまめに書いているとなると事態はかなり深刻だと思った

『この繰り返している時間を抜け出すには生きて次の日を迎える。しかし必ずと言っていい、俺は今日その日に必ず死ぬ、交通事故か殺人に会う、はたまた急病で病死、どれもあるが何故か死んだ事は認識できるがその死ぬ前の記憶がすっぽりと抜けている、言ってしまえば学校を出た瞬間からの記憶だ……』

「(じゃあ学校に居続ければいいんじゃね?)」

俺はそう考えた、がしかし

『学校に居続ければいいんじゃね?、そう考えただろ、もちろん考えた』

「(だよね…、これ書いているの俺だから考えも俺…)」

既に同じ考えが書かれ実行されていた

『どうしても先生に見つかり学校を追い出される、理由を言っても頭がおかしくなったのか?、と貶され結局はダメ、最終的には家に着き次の日を迎えることが最終目標だ』

「(どうすればいいんだよ、何か方法は…)」

『それとこれはかなり重要な手掛かりだ……』

『帰る時は一人、可美奈と一緒、十華と一緒、保健の先生と一緒、この四つ又は様々な組み合わせで帰ってる、ここだけは唯一の変化だと思う、そしてどれかが正解でどういったルートを辿るかで変わる』

ノートには今までにない変化が書かれていた

「(変化……)」

俺はこれを見て少し疑問に感じた

「……くん、…とうくん、斎藤くん?」

「は、はい!?」

美術の先生に呼ばれて俺はビックリして椅子から立ち上がった

「話を聞いていましたか?」

「あーーー……、いやすみません、聞いていませんでした」

俺は頭を下げて謝った

「ちゃんと聞いといて下さいね、座ってよし」

「すみません…」

二度謝り椅子に座った、周りは俺をクスクスと笑っていたが見下した笑いではなく単に面白ろかった理由で笑っていると思い、俺も軽く笑って応えた

ついでに十華を見ると十華は俺を見てはいなかった

「(やばいなぁ…、話を聞きたいが聞けない状況だな…)」

無理して聞いた所で答えてもらえるか分からない、俺はあきらめるしかなかった

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