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日常から非日常へと変わる

 ーー20XX年5月25日(水曜日)


 ピピピッ、ピピピッ

 とベッドの上に置いてある時計が時刻七時を指し朝を知らせる音が静寂な部屋から音が煩く響いていた

  「……う、う〜ん、うるさい…」

 俺はベッドから起き上がらず布団の中から手を伸ばし手探りで時計を探し音を止め、また静寂が訪れ眠りに入った

  「こらーー!!」

 すると次は部屋のドアが開き一人の少女が大きな声をあげて入ってきた

  「五月蝿いな〜…、もう少し寝かせて」

  布団に潜り外部の音をできる限り遮って再び眠りに入った

  「あーー!お兄ちゃん、そろそろ起きないと遅刻するよ!」

  「大丈夫だ、俺は遅刻しない…」

  「もう、早くして!!」

 少女は布団を盛大に振り払いまだパジャマ姿で寝ている俺をベッドの上で丸裸にした

  「寒い、布団返して」

  「ダメ、早く起きて」

  「う〜ん、分かったよ着替えるから部屋から出てくれ」

  「五分で着替えて下に降りて来て」

  「十分は?」

  「五分、私は下で朝ごはん先に食べているから」

  「分かった」

 俺はベッドから起き上がりパジャマから制服に着替え始めた


 俺は斎藤 零寺(れいじ) 高校三年

 先程の少女は妹の可美奈(かみな) 高校一年

 兄妹揃って同じ高校だ

 両親は俺が中学生の頃に別れてしまい、今は父親の祖父と祖母の家に住まわせてもらっているがその祖父と祖母は家にはおらず高齢者施設にいる、この家には俺と妹しかいない、父親はほんの時々来るがあまり話はしない

 そんなこんなで俺があまり得意ではないが一応料理担当で妹は洗濯や掃除などといった分担して過ごしていた

 朝ごはんは昨日に作った物の残りだが仕方ない、俺がこの有様で朝起きないからだ


 制服に着替え終わり、机の上に置いてあるカバンと腕時計を取った

  「あれ?」

 しかし異変に気がついた

  「腕時計にヒビが入ってる」

 そこまで高い腕時計ではないがその腕時計のガラスにヒビが入っていた、針は正常に動いていた

  「まあ、いいか後で新しく買うか」

 俺はそこまで気にしていなかったため普通に腕に巻きつけカバンを持ち部屋から出て下に向かい朝食を取ることにした


  「ふぁ〜、まだ眠いな…」

 大きな欠伸とともにリビングに来てテレビのリモコンをとりテレビを付けた

  『ーー今日の天気です、今日は夕方から雨が降るでしょう、お出掛けの際には傘を持っておくと良いでしょう……』

  「雨降るのか、傘を持って行こう」

 テレビで天気を伝える若い女性のキャスターが爽やかな笑顔で天気を伝えていた

  「お兄ちゃん、私もう行くね」

  「部活か?」

  「そう、朝練」

  「おうそうか、頑張れよ」

  「はーい、行ってきます」

  「行ってらっしゃい」

 妹は運動部で毎日朝練がありいつも俺より先に学校に行く

  「あ、可美奈」

  「んー?何ぃ?」

 妹がバックを抱えてリビングから出ようとした時に俺は呼び止めた

  「傘ちゃんと持っていけよ」

  「うん分かった、じゃあ行くね」

 妹は笑顔で頷きリビングから出て玄関から傘を取る音が聞こえてからドアが開く音が聴こえて妹は先に学校に向かった

  「さて、朝食とるか…」

 台所に向かい、食器棚から茶碗を取り出して炊飯器にご飯をすくい、冷蔵庫から冷凍食品を取り出してレンジに入れてから一度椅子に座った

  「あ、そういや可美奈はちゃんと朝食とったのか?」

 妹の心配をしつつおにぎりを握って持っていこうと思った、ちょうどその時にレンジが鳴り冷凍食品が解凍し終わった

  「ご飯は前日になんとか洗ってタイマーセットすればなんとかなるが、おかずに関してはやはり朝作らないといけないのか、かと言って可美奈に頼むのも大変だろうし、ちょっと考えとくか」

 俺はボツボツと考え独り言を呟き明日から冷凍食品はやめて、何かしら作ろうと決意したが朝早く起きるのが辛いからまだ先でいいや、と考えた

  「六時半過ぎ、七時に来るんだよなまだ時間はある」

 リビングの壁にある時計を見た、いつも八時になると“彼女”が来るからだ

 彼女とは、俺が高校に入学した時に小学校の時から幼馴染だった

 三嶋 十華とおか

 十華は高校が一緒になり入学した当初に告白してきた、なぜ『高校に入学してから告白した?』と不意に聞いたら『小学校の時から好きだった、けど告白する勇気がなかった、けど勇気を出して告白できてよかった、これでずっと一緒にいれる』と言っていた

 そして次の日から俺の家まで来るようになった、別に嫌ではないから気にしてはいなかった、もちろん妹も事情を知っている

  『ーーつぎのニュースです、昨日未明に男性の遺体が発見されました、遺体は多数の刺し跡が見つかり警察側からは大量出血で死んだと思われ捜査を進めています、また近日に多数の同じ事件が多発していることから連続殺人事件だと考えられています。……』

  「また殺人事件か、しかも連続…、怖いなしかも現場が近い、可美奈にも伝えて一緒に帰れるときは一緒に帰ろう」

 そしてその後にスポーツなどの報道を観ながら俺は朝食をたべすすめていた

  「そろそろ来るか…」

 時計を再び見ると時刻は『七時』を指す前だった、それと同時に玄関のチャイムが鳴った、そして可愛らしい声が聞こえた

  「零く〜ん、おはよう起きてる〜?」

  「起きてるよー、今行く」

 俺はリビングから大きな声で玄関の外にいる十華に言った、そしてテレビを消して食べ終わった茶碗を台所の流しに置き軽く水洗いして置いたままカバンを取り玄関に向かい靴を履きドアを開けた

  「おはよう、十華」

  「おはよう、零くん」

 そこには俺と同じ制服姿で長い黒髪で豊満な胸でスラリとした足でチャームポイントを表すかのような赤いフチのメガネを掛けていた、外見はいかにも優しそうでなんでも出来そうな雰囲気を漂わせていたが実際は天然、それを裏付けるかのように天然さはすぐに表れた

  「十華、ここ」

 俺は自分の頰を指した、それに気づいた十華は自身の頰を触ったそこには一粒のご飯粒が付いていた

  「あわわ、見なかった事にして」

 十華は急いでご飯粒を取り口に運んだ

  「全くそんなに急いで来なくていいのに」

 十華の家は俺の家から学校に向かう道のりの逆方面にある、そのため必ず俺の家を通る

  「私の家が遠いからこの時間に来るためには早く起きて早くご飯を食べて出ないと間に合わないの!」

 頬を膨らませ訳を話していたが実はもう片方の頬にもご飯粒が付いておりそれには気づかず話していたため俺は笑いを堪えるのに必死だった

  「もう何笑ってるの?」

 十華は俺が笑い堪えるのに気付き軽く怒り始めた、俺はもう片方のご飯粒が付いている頬を指した

  「何?……あ」

 十華はご飯粒を取り再び口に運んだ、そして恥ずかしがり何も言わなくなった

  「ほら行くぞ」

 俺は玄関の鍵を閉めて歩き始めた、十華も俺の横に来て一緒に歩き始めた

  「零くんの意地悪ぅ」

  「しっかりしない十華が悪い」

  「しっかりしてますぅ、しっかりしてないのは零くんの方ですぅ」

  「いやないな」

  「えーー」

 俺と十華はくだらない話で盛り上がって歩いていた


  「そうだ、とお……ズキッ……うっ!?」

 頭に痛みが走った、その痛みは風邪の熱とかで感じる痛みでは無く、今までにはない痛みだった

 俺はその場にしゃがみ込んだ

  「え!?ちょっと大丈夫?」

 十華もしゃがみ込み俺を心配した

  「だ、大丈夫だ……ズキッ……」

 また痛みが走った

  ーーー………から……ーーー

 声が聞こえた、十華ではない誰かが脳に直接呼びかける声が、しかし全て聞き取れない、何かノイズが走る音も混じり全く聞こえない

  「だ、誰だ…?」

  「え?」

  「誰なんだ?」

  「零くん何を言ってるの?」

 痛みは締め付ける痛みでは無く、脳を貫く痛み、それは尋常じゃない程の痛みだった

  「ぐっ……痛い……」

  「ど、どうしよう零くん聞こえる?」

  ーーー………らず……ーーー

 また声が聞こえた、さっきとは違う言葉だと思う、しかし先程と同じで全て聞き取れない

  「零くん!!」

  「ーーだ、大丈夫だ」

 すると段々と痛みが引いてきた

  「本当に?」

  「本当だ」

 そして痛みは全て消え、先程の頭の痛みが嘘のように全く感じなくなった

 俺は少しふらつきながらも立ち上がった

  「病院行く?」

  「だ、大丈夫なんかもう完全に引いたから」

  「でも…」

  「本人が大丈夫と言ってるんだから大丈夫だ」

  「う、うん…」

 十華は心配していたが俺は病院行くまでもないと思っていたため学校を優先した

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