決めた未来
ーーー5月25日(水曜日)ーーー
朝、目が覚めた
「う、う〜ん」
全身がだるく起き上がるのに一苦労だった
「おはよー!お兄ちゃん!」
朝から元気で大きな声が俺の部屋を開けたと同時に響いた
「うるさい」
部屋に入ってきたのは可美奈だった、俺は布団を頭まで被って外部の音を出来る限り遮断した
「お兄ちゃん!おはよー!起きてー!」
「うるさい、俺はまだ寝てるんだ」
「起きないと遅刻するよ!」
「大丈夫、俺は遅刻しない」
「全く私は先に朝食をとってるから早く起きてきてね」
「分かった分かった」
可美奈は部屋から出ていった、俺はゆっくりと起き上がり制服に着替え始めた
「眠い…」
まだ眠気があり意識が朦朧とする中、制服に着替え終わりカバンを持とうとした時にある物が落ちた
「ん?時計?」
それは腕時計だった、腕時計を拾うとそれは既に壊れていて今にも時計版が外れそうだった
「落下した時に壊れたか?まぁいいやあとで買おう」
そう言った瞬間に時計版が外れ中から紙が出てきた
「何だこれ?誰だよこんな所に紙なんか閉まった奴」
まだ眠気で意識はハッキリしない、俺は紙を手に取り広げた
『ほけんしつの机の下』
そう書かれていた
「……ん?」
俺はふと自然に制服のポケットを探り始めた、何もないのは分かっていた
しかし出てきたのは一枚の紙だった
「はぁ…、こんな紙入れたっけな?」
俺はもしかしたらイタズラで入れられたのだろうと思い渋々内容を見た
「………」
内容は意味不明な内容だったが俺は微かに覚えがあった、記憶には無い
けど微かに覚えてる、この内容
「……そうだ」
意識がハッキリとしてきた
「俺は…、俺は止めようとしたんだ」
全て思い出した、俺は急いでリビングに向かった
「可美奈!」
「ビックリした〜、もう朝から何?」
「可美奈、お前どうして……」
「……あれ?おかしいな記憶を消したはずなのにどうして?」
「ーーーッ!」
俺は可美奈に近づき頬を思いっきり叩いた
「痛っ!何するの!」
「可美奈!」
俺は怒鳴った、可美奈は一瞬体を震わせた
「お、お兄ちゃん?」
「もう止めてくれ、嫌なんだ」
「だ、ダメだよ!死んじゃうよ!」
「俺は死ぬのは構わない、けど可美奈がこれ以上踏みとどまるのはもっと嫌なんだ」
「どうして?私はお兄ちゃんと一緒に居たいのに」
「時間は止められない、止めちゃダメなんだ」
「……お兄ちゃんは私と居るのが嫌?」
可美奈から涙がこぼれ始めた
「嫌じゃない、けどいつかは離れないといけない」
「ダメ絶対に死なせない」
「全く世話の焼ける妹だ、可美奈よく聞いてくれ、俺はこれ以上可美奈に負担をかけたくない、ましてや俺の生死のためにそんな無駄な事をするのは間違ってる」
「間違ってない!私は…」
「確かに間違ってないかもしれない、けど未来は変えてはいけない、いや変えても変えられない未来もある、その未来が今の俺だから無理だと思う」
「だから私が見つける何回、何百同じ時間を繰り返しても」
「そしたらお前の負担が大きすぎる」
「大丈夫!私なら出来る!」
「無理だ、これ以上負担をかけることは許さない」
「お兄ちゃん…」
「だから未来に進むんだ一人、いや十華がいる安心しろ、俺が居なくなっても十華が助けてくれる」
「嫌だよ、お兄ちゃんが居なくなるのは」
可美奈は俺に抱きついてきた
「可美奈、分かってくれ俺だって辛い」
「今日学校休もうお兄ちゃん…」
「悪いヤツめ…」
俺と可美奈は今日一日学校を休むことにした、あとから来た十華は記憶を消されていて事情を説明出来なく風邪と偽り休むことを伝えた
リビングでは俺と可美奈二人で座っていた
「何するお兄ちゃん?」
可美奈は泣いていた様子から一変して陽気な笑顔だった、無理して笑顔を作っていることがバレバレだったが俺は言わなかった
「そうだな〜、あ、あれがあった」
俺は叔父と叔母の部屋の押し入れから一つのダンボールを取り出してきた
「何それ?」
「アルバム、今みるのはちょっと不思議な感じがするがまぁ今日ぐらいはね」
俺はダンボールを床に置き何冊かアルバムを取り出して可美奈と一緒に見た
「凄い古い、おじいちゃんとおばあちゃんの若い頃の写真だ」
「若いな〜」
叔父と叔母の幼少期の写真がいくつもあった
「ん?これはお母さんとお父さんか…」
進んでいくに連れ時代が進み両親の写真に変わった
「この頃は仲が良かったんだね」
「まぁ誰しも最初はいいさ」
写真の中には父親が母親を抱えてる姿や抱き合ってる姿があった
「あ、これは俺が産まれた写真か」
進んでいくと赤ちゃんの写真があり下に名前が書かれていた『斎藤 零寺』と
「お兄ちゃん可愛い」
「いや赤ちゃんの時は誰しも可愛いよ」
さらに進むと次は可美奈の赤ちゃんの写真が出てきた
「ほら可愛い」
「お兄ちゃんのいじわる」
「えー?何が?」
楽しい会話が続いていたがアルバムはそうもいかなくなった、可美奈の赤ちゃんの写真から段々と両親の写真が減っていきしまいには高校入学当初の写真は可美奈が入学した時に俺が隣に居ただけの写真しかなかった
「懐かしいな、入学当初は色々と忙しかったな」
「そうだね…」
するとアルバムの上に一滴の水が零れ落ちた、それは俺の涙だった
「あれ?何でだろう涙が出てきた」
「お兄ちゃん、やっぱ怖いの?」
「怖い、かもしれない、いや怖い」
「じゃあはい」
可美奈は俺の方を向いて手を広げた
「なに?」
「全く世話の焼けるお兄ちゃんだな」
「はは、お前が言うかよ」
俺は可美奈に抱きついて泣いた
時間にして数分、俺は妹の可美奈に抱かれて泣いていた
「可美奈…」
「何?お兄ちゃん?」
「お前胸があまりないんだな」
「なっ!?お兄ちゃんのバカ!」
可美奈は俺を突き飛ばした
「うおっ!お前いきなり何するんだ!」
「おおおお兄ちゃんがいきなり変なこと言うからだよ!」
「いきなりって、事実を言ったまでだよ」
「バーカバーカ、お兄ちゃんの変態!」
「はぁ、でもまぁ元気になったありがとう」
「ふん、そのまま死んじゃえ」
「いや死ぬんだけど」
「あ、ごめん」
「いいよ気にしてないから、さて時間はお昼になるし外行くか」
「そうだね、行こう!」
俺と可美奈は私服に着替えて家を出た




