《ビボ肉じゅるり☆③》
ビボルダー……
それは既知のモンスターの中でも最悪の部類に入る凶悪な魔物だ。
最大の特徴は、中央の大きな瞳で魔力を完全無効化してしまう能力。
それに加え、頭部から生えた触手の先にも眼球があり、それぞれに
石化、毒、睡眠、冷凍、混乱、原子分解などなど様々なバッドステータスを付与してくる。
魔導士たちにしてみたら、正に天敵。
相性は最悪なのだ。
ゲイザー、イビルアイ、バグベアードなど、様々な世界で名前を変えて、その姿を認識されている。
「よし、承ろう」
まさかの快諾。
俺の脳内説明の苦労が一瞬で無に帰す…
「行くぞ」
やる気満々のアルドラ。
「えっ?、もう行くのか?準備とか良いのか?」
狼狽するマーヴィック。
「どうせ5名の救出も兼ねているのだろう。早い方が良い」
「流石だな」
感心した素振りを見せ、同伴者のローブを捲る。
「エヴァンスに石化解除ポーションを調合させてきた。出来れば救出したい」
肩から掛けた太めのベルトに試験官が5本、収納されていた。
「報酬は弾んでもらうぞ」
「いいだろう」
5人は隣室の鏡の間に移動する。
「おおぉ!これが噂に名高い【夢幻の綸溝】、実際この目で見るのは初めてだ」
マーヴィックが感嘆する。
「再びその名で呼ばれる時が来ようとは…」
心なしか鏡が泣いているように見えた。
「稀有なる鏡の上位精霊を封じたという伝説の魔具ですよねぇ…凄い…」
エヴァンスが、わぁ~っとキラキラした目で見入っている。
「臭くて汚い辺鄙な場所に閉じ込められて可哀想に…」
大人しそうだけど意外に辛辣エヴァンス君。
「全くだ!もっと言ってやってくれ!その筋肉バカに!なんなら国宝として王都に」
「転送だ。準備しろ鏡」
鏡の訴えを見事にぶった切るアルドラ。
「………………チッ!」
「お、おい、何だか【夢幻の綸溝】のガラが悪くなってる気がするのだが……」
マーヴィックが俺を見て来るので
「さ、さぁ…」
と、視線を逸らした。
「場所を」
詠唱中のアルドラが転移先を尋ねる。
「ギヴニッド山脈北端、中腹の森林だ!」
マーヴィックが答えるや否や、魔法陣が展開し術は完成。
アルドラを先頭に5人は光り輝く鏡をくぐった。