「コカ肉こそ至高⑤」
「ぐふぅぅ、、、手強い敵であった」
片膝をつきながら呼吸を整えたアルドラが善戦したかのような台詞を吐く。
苦戦してたのは、湖の水だけどね。
「クリフ、蘇生術、素晴らしい。クリフ、偉い」
獣人が半ベソをかきながら、嬉しそうに俺を抱きしめる。
「さぁ、村に戻ろう」
─────30分後。
不安そうに固唾を吞んでアルドラ達一行を待っていた群衆は、彼らの凱旋を狂喜乱舞で出迎えた。
アルドラは村長にコカトリスの首を投げて渡す。
沸き起こる歓声。
この首自体も希少部位であり、換金すればこの村に多少の富をもたらす。
「セス、事情を説明してやってくれ」
「鳥倒した。でも、デブ鳥、落ちる、湖、逃げた、警戒する」
それを興味深くウンウンと頷きながら聞いていた村人は、再び両手を上げて喜び、踊り出す。
セスの説明が伝わったのか伝わってないのか、良くわからない。
説明する人材を決定的に間違えている…
「さて、帰るぞ」
アルドラはほぼ裸だが、辛うじて残っている衣服である腰巻に手を突っ込むと、湿った巻物を取り出した。
【帰還の巻物】だ。
アルドラ自身は転送魔法を習得しているのだが、実は転送魔法は難易度が高く、
座標のズレの軽減、莫大な魔力負担の軽減、3人+魔物と言う負荷、魔法陣の簡素化などの事情により帰還はスクロールを使う事が多い。
やがて魔力の渦に飲み込まれる3人と死んだコカトリス。
来る際と同じ浮遊感に襲われたかと思うと、そこはもう拠点の調理場だった。
アルドラは先程まで溺れて死にかけたのが嘘のように、裸にエプロンを巻くと、上機嫌でコカトリスを捌き始めた。
食事一回分に切り分けると、ブリザーベイションと言う腐敗防止魔法をかけて行く。
これも上位魔法だが、こんなアホみたいな用途に使われているとは、、、
術の発明者が気の毒でならない…
そしてアルドラはこの時が一番幸せそうな表情をする。
だって、1か月分の上質なタンパク源を確保できるのだから。
───────────────────────コカ肉こそ至高・終
コカ肉こそ至高編はこれで終わりますが、次回から「ビボ肉じゅるり」を連載開始予定です。