「コカ肉こそ至高④」
────まぁ、普通はグシャッと即死だろうな。
しかし俺はムクリと何事もなかったかのように立ち上がり
「あばば!あばばばばばっ!!」
バッシャッバッシャと溺れるアルドラを、赤子の悪戯を見守る母の温かさの様な微笑みで見つめていた。
「つかまれ!」
セスが水飛沫を上げて泳ぎ、アルドラに接近。
必死の形相で何とかセスの首にしがみ付く筋肉男。
華麗なる人命救助だが、泳法はめっちゃ犬かき。
アルドラを陸に上げると、颯爽と身を翻し沈みかかっていた雌コカトリスすらも銜えて陸揚げして見せるが、超スゴイ犬かき。
殺気を感じ湖面を見ると、太ったコカトリスが浮いて漂っており、こっちを睨んでいた。
お腹には巣と卵とガマガエルを抱えながら。
「ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ」
鳴き声と、凄まじい怨念を抱きながら湖のさざ波に揺られ徐々に遠のいていった、、、
身体は濡れてないけど身震い。
絵ずらがスゴイし。
「まずいぞ、、、」
セスの危険察知能力は素晴らしいが、大抵よろしくない事が起こる。
足元に転がっている裸の筋肉野郎が息をしていなかった。
「俺、獣人、出来ない」
と自分のマズルを指さす。
「ふぁ!?」
この流れは!?!?!?
「待て待て待て待てーっ!」
俺のファーストキスがもしや、、、この、、、、!?
血の気が引いて徐々にどす黒くなっていくアルドラの顔面。
「くっ、、、これは人命救助だ、決してキ、キスなどではない!!!」
自分を説得させるように呟き、意を決した俺は、救急救命講習で習った人工呼吸を施す。
鼻を摘み、顎を上げ、気道を確保し、顎の先に指を添えて、、、、
迫りくるむさ苦しい野郎の顔面、、、
(あっ…、唇って柔らかいのね…)
破れかぶれの行為で混乱した俺の頭脳は、意外にも心地よい新たな感触に困惑していた。
繰り返すこと数回。
「ごべっ!ごほっ!」
水を吐き出しながら、アルドラが意識を取り戻した。