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{故郷は弱肉強食②}
「お茶目なやつよ…」
アルドラは鏡に向かってそう言いながら、脇腹をボリボリと掻いた。
「───────────んっ!?!?!?」
目を細めて脇腹の一点を見つめる筋骨隆々の半裸男。
「なんじゃこりゃぁ!?」
鏡に駆け寄り、そこを間近で観察すると…
赤い斑点が出来ていた。
「痒い!痒いぞ!!」
そこでハッと閃き、セスの方を振り返る。
セスは相変わらず、後ろ脚で耳の裏あたりを掻きむしっていた。
『グラビティフォール弱め』
右手を突き出し、鬼の形相で魔法を完成させるアルドラ。
「ぐおおぉっぉ??」
床に四つん這いになって、突然の『重み』に耐えるセス。
無詠唱で超高難易度の古代魔法。しかも威力を最小限に抑えて。
天才としか言いようが無い。
無駄に。
やがて、獣人の体中から、黒い点がポトポトと落下する。
それらは、重力魔法の効果が切れると、
ビョン、ピン、ぴょん、ピンピン
と四方八方に跳ねた。
ぎゃぁ~と悲鳴を上げて逃げまどうセス。
「ノミだね…」
「ああぁ、ノミだな」
俺とアルドラはその光景を見て苦笑を禁じ得なかった…




