“苦肉の策の新天地⑥”
「これは…」
荒れ果てているとは言え、現王国における技術の粋を集めた研究室に匹敵する設備の数々に息を呑む。
莫大な費用と技術が注ぎ込まれているであろう。
試験管やフラスコなどの機材は全て破壊され、書棚にある資料などは無残に焼却された痕跡がある。
「徹底的に何かを隠滅している───(またはそう見せかけている…?)」
「ですね…」
アルドラの推測にエヴァンスが相槌を打つ。
「備品は新調するにしても、この部屋は使い勝手が良さそうだ…」
ニヤっと不敵な笑みを浮かべるアルドラ。
「解っているとは思いますが、未調査エリアになりますので一度マーヴィック様にお越し頂く事になると思います」
と、エヴァンスが釘を刺す。
それまでは勝手に現場を荒しては駄目ですよ、っと意味を持たせて。
その流れで、これからの具体的な引っ越しや様々引っ越し準備・調整の話になり、会話を続けながら上階に戻っていくアルドラ達。
俺は、この施設に極微かに既視感を得たため、しばし棒立ちになっていた。
「ぼりゅ~?」
心配そうに覗き込んでくるボルダー。
「びりゅびび!?」
ビルダーが急に弾みながら部屋の片隅に駆け出した。
「お?、ちょ、待て待て」
追いかける俺。
「びび──────ッ」
可愛い瞳から怪光線を放つビボルダー。
いつの間にその技を使えるようになった!?!?
魔力を消失させるその驚異的なビームは頑丈な壁の一部を、スゥーっと消失させてしまった。
更なる隠し部屋が出現したのだ。
その暗がりに鎮座する棺のような収納具は僅かに開こうとしているではないか!!
隙間から漏れ出る白煙。
ビルダーとボルダーが近寄る。
恐る恐る一緒にそれを覗き込むと、、、
フシュ―っと鼻と口から白い吐息を漏らす人体が。
ギョロリ。
血走る両目と視線が合った。
「わ…わがアルジよ…ケイヤクにも」
『ガチャン!!!!』
うん、閉めた。
すぐ閉めたよね。
だってもうこれ以上キャラ渋滞無理!個性強すぎ!
見なかった見なかった、なーんにも見なかった。
簡単に暴いてしまった隠し扉も書棚で塞いで、何食わぬ顔で俺は上の皆と合流するのだった。
苦肉の策の新天地:END




