“苦肉の策の新天地⑤”
一行は入って来た1階の構造を改めて確認する。
上層を支える為の4本の柱は太く両手で囲っても手が届かない程。
大部分がエントランス的な広間だが、接客用の小部屋も備わっていた。
不思議な事に、ありがちな絵画、装飾品、甲冑などの置物などは一切無い。
エヴァンスは皆を地下へと案内した。
かなり気温が低くなっている。
俺はブルっと身震いをした。
狭い調理場と保管室があった。
どちらもガラクタが散らばっており片付けが大変そうだ。
溜息をつくと通路からセスが皆を呼んだ。
「お~い、皆、来て欲しい」
全員が集合すると、セスは通路の壁の一部を念入りに調べ始める。
床に接触している差下段のレンガをゆっくりと押すと、仕掛けが発動し、
隠し通路が現れた。
「こ、これは!?」
全員が驚き視線が交差する。
「ここからは未調査エリアです。足を踏み入れる様でしたら皆さんお気を付けください…」
エヴァンスが注意を促した。
「我らなら問題あるまい。行ってみよう」
アルドラが全く臆せず進んでゆく。
が、いつもより少しだけ緊張した面持ちだ。
突き当りの部屋はこれまでとは打って変わって頑丈で無機質な素材で出来た大きい部屋。
まるで何かの研究室のような空間が一行を待ち構えていた。




