“苦肉の策の新天地②”
「本当に申し訳ありません…」
馬車にガタゴト揺られながらエヴァンスが俯く。
「みな恐ろしいのです。魔力を持つ者たちの天敵が近隣に生息する恐怖…」
「びりゅう~?」
子犬が首をかしげるように、憂いを帯びた瞳を傾ける魔物の子供2体。
「こんなに可愛らしいのに…」
お、おう…
か、可愛いのかこれ…
「そろそろ馬車を止めて昼食休憩にしましょうか」
エヴァンスは4人分のランチセットをバックパックから取り出した。
「簡単なサンドウィッチですが良かったどうぞ!」
ちょっと自慢気なエヴァンス君。
時折見せる高い女子力に一瞬ドキッとする。
しばしモグモグタイム。
「それしても、こいつらは何を食べるんだろうか…そもそも食事をするのか?」
俺はパンを頬張りながら当然の疑問を口にした。
「ビボルダーの幼体なぞ初めての案件だろうなぁ…王立図書館で調べても良いが、どちらにせよ引っ越しが片付いてからだな」
アルドラが答えた。
(それにビボルダーの体液成分についても研究したいしな…)
アルドラの不敵な笑みと独り言を俺は聞き逃さなかった。
モンスターとの共存に妙に積極的なのも思惑が有っての事か…
清々しい程の個人的欲望だな!!
そんなこんなで王都から6時間程経過した頃、小川のせせらぎが心地よい雑木林の一角にそれは姿を現した。
荒れ果てた庭を構える、塔の様な建築物だった。




