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「コカ肉こそ至高①」

「ふううぅぅぅ…完璧すぎる…」


2mはゆうに超えるであろう木枠に緻密な彫刻細工が施された姿見に向かって男は呟いた。


ほぼ裸で。


サイドチェストポージングを維持し大胸筋をピクピクさせながら。


「鏡よ鏡、、、我が肉体より美しいモノがこの世に存在するなら答えてみよ」


「うん、キモイ」


即答だった。

同時に鏡が一瞬で曇る。

真冬の窓ガラスに出来た結露の様に。


「照れおってからに…」


いつもの如く朝方に行われる不毛なやり取りを、死んだ目で眺めていると、

狼系の獣人族であるセスが現れ、全裸の筋肉男に衣服を投げつけた。


「アルドラ、コカ肉、ストック無いぞ、いいのか?」


「何っ!」

普段、不遜で自信家であるこの筋肉男が、この時のみ動揺を見せる。


「急いで調達せねば。セス、クリフ、行くぞ」


クリフと自分の名を呼ばれて我に返り、慌てて装備を整える。

1カ月に一度のお決まりの流れだ。


「おい鏡、転送陣を展開するぞ」


「………チっ」

あれからずっと曇っていた鏡から明らかに舌打ちが聞こえた。


アルドラが右手の平を鏡面に密着させ、難解な呪文を高速で唱え始める。

セスと俺には魔法を扱う素質が無いため、理解できない言語なのだが、

強力な魔素の流れが肉眼でも捉えられるほど集積・発光し、光の帯が陣を形成する。


程なく

「行くぞ」

アルドラは波打つ鏡面へと姿を消し、俺たちもそれに続いた。


一瞬、ふわりと落下するような感覚に襲われたかと思うと、ストンと着地する。

その直後…


「おおおおおおおおぉぉぉぉ!!」


大勢の群衆に、、、、


、、、崇められた。

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