導入「気になるお店」
電撃大賞に応募し、一次選考さえも通らなかった作品です。
このまま、日の目を見させてやれないのもかわいそうだと思い、投稿しました。
この作品には微量の百合表現を含んだり含まなかったりします。
苦手な方は回れ右をして下さい。
気にしない方は、作品を楽しんでください。
六月の半ば、何の変哲もない通学路。あたしはこれから学校、という日常的で変化の少ない空間へと行かなければいけない。
まだ、眠気が残っていて歩きながらでも欠伸が出てきてしまう。人のいるところで口をあけるのはみっともない。それでも、出てきてしまうものは出てきてしまう。だから右手でさりげなく口元を隠す。
人に見えないところで大口を開けながら、あたしは肩から少しずれ始めた鞄を肩にかけ直す。
と、不意にあたしの視界のなかに見覚えのない建物が目に入った。昨日までのあたしの記憶との差異を感じる。今までこんな建物あっただろうか。
しかし、よく見てみると、ここは確か以前にテナントを募集していたところだ。もしかしたら、昨日の夜のうちに誰かがここを借りたのかもしれない。
一夜のうちにすべての準備を整える、というのはすごいことだ、と思う。どうやって準備をしたんだろうか、と気になるところだ。お店の準備をするためだけにたくさんの人を雇ったんだろうか?いや、それは流石に現実的じゃないか。
それよりも、ここはお店を開くには向いていないような気がする。ここは比較的人通りが少ない。確か、前ここにあったお店もお客さんが少なくて経営が難しくなった、とかの理由で無くなってしまったような気がする。
そんなことを思いながらあたしは目の前の建物を観察する。
ガラス越しに見えるお店の中には動物の入れられたケースがいくつも並べられている。ペットショップのようだ。防音対策がしっかりしているのか動物の鳴き声は全く聞こえてこない。
そして、なんだかよくわからないけれど不思議なものを感じる。この言葉に表せない感じをとてももどかしく感じる。
少し視線を動かすと看板のようなものが目に入った。その看板は緑色の板に黄色の文字が書かれただけのシンプルなものだった。
そこには「幻想動物屋〜Magical Animals Shop〜」と書かれている。幻想動物?
どういうことなんだろう。何かの比喩、なんだろうか?それとも、本当に魔法のような不思議な動物を扱ってたりして。
って、そんなことないよね。本当にそんな生物がいるんだったらこの世界に知れ渡ってるはずだし。
でも、そういう不思議な動物がいたらいいな。そうしたら、この退屈でつまらない毎日が変わってくれるかもしれない。二年目に入る高校生活は面白みがなさ過ぎてもう飽きてしまっていた。
と、こんなこと考えてる暇なんてない。早く学校に行かないと。
あたしは、少し急いでペットショップだと思われるお店から離れる。数歩進んだところであたしは振り返った。
……ここのお店、学校の帰りに寄ってみようか。