勇者パーティーから追放された盗賊の物語
勇者と会ったのはいつ頃だろうか。
彼は優しかった。未練でもなく、美化しているわけでもなく。
俺はただの盗賊だったから、彼らにとっては足手まといだった。
「済まないが、お前はここから出て行ってくれるか?」
その唇は強張っていた。ここまで旅してきた仲間だ、内心では追い出したくなかったのだろう。
「ああ、分かったよ」
でも、俺自身役立たずなのは分かっていた。
俺の取り柄は速さだけで勇者みたいに魔法と剣をバランスよく、それでいて器用貧乏にならないわけでもなく。
魔法使いのように強力な魔法をポンポン使えるわけでもなく。
僧侶のように味方を補助したり、回復させたりできるわけでもない。
でも、そんな俺でもこの町では頼りにされている。
何故なら俺はこの辺にいる動物を速く狩れるし、植物の早摘みができる。
勇者は俺を追い出しても立ち行くように色々準備をしていたから、無事魔王を倒してくれるだろう。
だから、俺は頼りにされているこの町で過ごしていく。