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短編

桃太郎の敵は別にいる・・・・かもしれない

作者: 秋和翔

 冬童話祭2018の失敗?if設定はそのまま流用しなくてもいいんだよね?この桃太郎は『もしも桃太郎のおばあさんがきびだんごを知らなかったら』ではなく、「もし鬼が悪ではなかったら」というような視点で書いています。

「よし、ついにここまで来たぞ」

 桃太郎は鬼ヶ島に足を踏み入れ、小さな声で呟きました。

「まずはお宝の場所を探し出す。俺とイヌ、サルとキジの二手に分かれて行動する。鬼との交戦は出来るだけ避けろ。まずはお宝の確保だ。それで余裕があれば鬼を退治する。分かったか」

「ワン」

「ウキーー、ウキッキーー」

「・・・・・」

「相変わらずキジの返事はないが、作戦αを実行する。しかしもし困難な場合は各自撤退を試みろ。死んだら二度と挑むことは出来ないからな。では散開」


「くそっ。なかなか宝の場所が見つからないな」

 二手に分かれてから約10分。宝を隠している場所が見つからない。桃太郎は少し焦り始めていました。

「鬼から直接宝の場所を聞いたほうが早そうだな。イヌ、サルとキジとの合流がしたい。あいつらの匂いを追えるか」

「ワンッ」

 一度最初の場所に戻り、サルとキジの匂いを追います。するとすぐにサルとキジの姿を見つけました。

「ウキッ、ウキッ、キーーー」

 どうやら鬼と戦っているようです。

 桃太郎は刀に手を添えました。そして鬼の死角から飛び掛かり、刀で鬼の胸を切り裂きました。

「ぐわぁぁぁっ」

 鬼は大きな叫び声を上げながらその場に倒れました。

 そして「侵入者だぁぁぁぁ」と叫ぶとそのまま動かなくなってしまいました。

「しまった。宝の場所をきくつもりだったのに。鬼の仲間もすぐにくるだろう。皆、作戦θだ。急ぐぞ」

そう言うと桃太郎を先頭に三角形を作り、走りだしました。


 イヌは鬼にかみつき、サルはひっかき、キジは目をつつきました。桃太郎も刀を振り回して、鬼を次々と倒していきます。

「お前たち、下がれ。お前たちでは無駄死にをするだけだ。私はお前たちに無駄死にをしてほしくない。ここは私が相手をする」

「あんたが鬼の大将か。お前たちの悪行、この桃太郎が正義の鉄槌を下す」

 そう言うと、桃太郎たちと鬼の大将の戦いが始まりました。

 両者一歩も譲らずることなく、戦い始めて10分くらい経った頃でした。鬼の大将がこう言いました。

「桃太郎、お前人間じゃないな。一体何者だ」

 そう問われた桃太郎は動きを止めました。

「一体どういう意味だ」

「人間であるなら、この私とこれほどの時間戦えるわけがないんだ。それも互角になんてありえない。お前は一体どうやって生まれたんだ」

「油断させようったってそうはいかないぞ」

「いいから答えるんだ。お前はどうやって生まれ、どうやってこんな野生動物を従えさせているんだ」

 しばしの沈黙がながれ、桃太郎はゆっくりと口を開いた。


「俺は桃から生まれた。だから桃太郎だ。優しい老夫婦に育ててもらってな。鬼、お前たちが人に悪さをしてるっていうんで退治の旅に出たんだ。その旅のなかでイヌ、サル、キジを仲間にしたのさ。このおばあさん特製のきび団子でね」

「桃太郎、落ち着いて聞くんだぞ。いいか。人間っていうのは桃からは生まれないんだ。人間の女の腹である程度育ってから出てくるんだ。そして他の鬼たちは知らないが、少なくともこの島にいる鬼は人に悪さをしたことなんてないさ。あとそのきび団子。おかしいと思わないか。普通、団子で野生動物をそこまで手なずけることなんて不可能だ」

「じゃあ、僕はなんだっていうんだ。それにお前たちが近くの村からお金を奪っていると聞いたぞ。誤魔化すな」

「桃太郎。お前が何者であるのか、それは私にだって分からない。色んな鬼や妖怪の仲間がいるが、お前のような話は初めて聞いたからね。あと、お金のことは少し勘違いがあるようだ。私たちは、村の人たちにお金を貸して、それを少し多くして返してもらっているんだ。それに山賊を怖がる人たちは私たちにお金を預けるんだ。そして私たちはそのお金を命を張って守っている。ちょうど今みたいにね。私たちのような異形の者は勘違いされることも多い。大方その噂は事情を知らない旅人が流したものだろう」

「嘘だ。そんなはずはない。おばあさんたちが俺に何か隠しているっていうのか。お前みたいな者の言うことを誰が信じられるっていうんだ」

「桃太郎君のことは私も何者であるか調べてみるよ。お金を奪ってないことを信じられないのなら、近くの村にいって村の人たちに実際に聞いてみるといい。それよりも、桃太郎君。おばあさんたちのことについて他に知っていることはないのかい」

「おじいさんは山に芝刈り、おばあさんは洗濯するのが上手で、本当に普通の老夫婦なんだ」

「そうか。とりあえず今日のところはこれくらいにしないか。私も亡くなった部下たちをこのまま放置しておきたくはないんだよ。桃太郎君。私は自分の目で私たちのことをみず、噂を鵜呑みにして、罪のない者たちを殺した君たちを恨んでいるよ。でも君には不思議なことが多い。私の勘が君のこと、特におばあさんたちについて知るべきだといっているんだ。だから君のしたことを許しもしないけれど、責めることもこれ以上はしないよ。今日はもう暗い。ここでゆっくりしていくといいよ」

 そういうと鬼の大将は桃太郎たちの周りに倒れていた鬼たちに歩み寄ると、一人一人に声をかけながら死を悼みました。桃太郎は心に大きな不安と傷を持ちながら、その場に立ちすくむことしか出来ませんでした。


 それから数日が経ったある日。桃太郎と鬼の大将が2人で話をしています。

「桃太郎君。君から分けてもらったきび団子を調べてみたんだが、どうやら普通の団子とは全くことなるもののようだ。正直どのように動物を従わせているのかは分からないが、私の仲間の妖怪がいうには、そのきび団子には強力な呪いがかけられているみたいだ。その妖怪は膨大な妖力をもっているが、それでも呪いを解くことは出来なかった」

「そんな。じゃあ、俺のおばあさんは呪術師かなにかっていうんですか」

「そこまでの判断はまだ下せないが、君のおばあさんか、その近くの者が強力な力を持っていることはまず間違いないだろう」

 2人の間に長い沈黙がありました。でもその沈黙は鬼の大将の一言でなくなりました。

「そうだ。桃太郎君。君の正体も少し分かったよ。君は人間だ。私は妖怪や鬼との混血を疑っていたんだが、どうやら純血の人間だ。でもやはり普通の人間ではないようなんだ。私も専門ではないからよく分からないが、私の仲間の怪物によると、君は作られた人間というべきものらしい。今の人間の間では、遺伝子というものを組み替えてより賢く強いものを作るという魔術があるようなんだ。桃太郎君の遺伝子はどうやらそんな風にしか生まれないような組み合わせだったんだ」

「俺は作られた人間・・・・・。では、おばあさんたちは魔術にも詳しいということになりますね」

「そうだ。つまり、君を育てた人たちは並の人間ではないということだ」


 その次の日。桃太郎はイヌ、サル、キジを連れ、鬼ヶ島を出ようとしていました。

「待つんだ、桃太郎君。一体どこに行こうとしているんだ」

「もちろんおばあさんたちのところです。鬼さんたちには大変お世話になりました。俺が鬼たちにしてしまったこと、そしてしてもらったことは死んでも忘れません」

「冷静になるんだ。もし君が本当のことを知ったとおばあさんたちにバレてしまったら何をされるか分からないぞ。危険だ」

「分かっています。でも、俺は行かなくちゃいけないんです。俺は自分がどうして作られたのか。どうしてきび団子をおばあさんが俺に渡したのか。不思議なことはまだあります。俺はこれの全部を知らなくちゃいけない。そんな気がするっていうか俺はそうしたいんです。たとえ俺にとっては優しいおばあさんたちが、何か強大な悪であったとしても、俺はいきます。俺にとってはあの人たちは親だから、あの人たちのことは俺には無関係ではないんです」

「桃太郎君。分かった。もう君を止めたりはしないよ。私はここを守らなくてはいけないから一緒にいきことは出来ない。でも変わりにこれをお供にしてくれ」

 そういうと鬼の大将は、自分の角を折ると桃太郎に渡しました。

「きっとこの角は桃太郎君の役に立つだろう。君の安全を祈っているよ」

「ありがとうございます。今度こそ自分の目で本当のことを見極めてきます。では行ってきます」

 

 こうして桃太郎はイヌ、サル、キジをお供に、きび団子の代わりに鬼の角を腰からさげ、新たな長い旅に出かけましたとさ。

 おしまい。

 中途半端と思われるかたもいると思いますが、この先を書くと時間がかかりそうなので、ここで切っています。このあとはそれぞれが、それぞれの想像してみてください。


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