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4 気になるのは、誰?

「ねね、柊! 鈴木くんだけどさ」

「……誰だっけ?」

「バスケ部のエースよ、昨日紹介した! 彼だけど、聞いた話では、柊にかなりご執着みたい。柊なら、みんなが納得する組み合わせだよ。そして、埋もれていた柊の株も上がる!」


 次の日も、柊たち3人の集まる昼飯時はガールズトークの真っ最中だ。

 もっとも、槻谷は男なわけだが。二人女子会プラス男一人とオス一匹。


「いや、それはどうでもいけど。まあ、悪い人でもなさそうなんだけどね。たださ」

「でしょ? ただ?」

「キモいだけで」

「致命的だった! どうしてよ!?」

「西沢さん、そんなに立花に無理強いするものじゃないと思うよ」


 色めき立つ西沢に、眉を潜めて槻谷が自重を促した。


「全世界女子の恋愛対象外の槻谷に、恋バナは関係ないことなのよ」

「いや、まあ……そうなんだけどさ」

「そうだよね、槻谷くんは、美玲以外のことは考えちゃダメだよ」

「柊!」

「顔赤いよ」

「そんなことない! ちょ、ちょっと、なんで槻谷まで顔赤くしてるのよ!」


 柊は苦笑する。


「そういえば、佐々木くんってさ」

「えー、また佐々木くん? 私は断然政宗くんを推すけどな」

「ちょっと気になってね。誰かと付き合ってたんだよね」

「うん、2―Cの井上さんと。でも、バスケ部辞めてから色々あったらしいよ」

「そうなんだ」

「何? 気になってるの? 柊、もしかして……」

「んー……まあ、気にはなっているかな」

「でもさ。うちの学校の生徒と、喧嘩もしたっていう話だよ。やっぱり、バスケ部のエースの方が良くない?」

「そのことで、僕にも言いたいことがあるんだけど……さ」


 槻谷が柊に話しかけるように会話に入り込む。


「佐々木くんは悪くないよ」

「槻谷、何言ってるの? あの時、結構騒ぎになったじゃん。無抵抗の男子を殴った、とか」

「うん、でも、その相手って、僕をいじめてた奴らだから」


 槻谷は『いじめ』という言葉を受け入れられるようになった。細かいところだけど、成長しているんだよな、コイツも。格好悪いところも、ひっくるめて自分なのだと思っているのかもしれない。

 柊だけではなく、西沢の力によるところも大きいだろうけれど。


「ああいうやつらって、いじめられてる奴のこととか気にせずに、現在進行形でベラベラ喋るじゃない? なんか、『あいつ、他の部員に彼女寝取られた悲しいバスケ馬鹿だから』みたいなこと言ってた」

「……そう、なんだ」


 柊は顎に細い指先を当てる。


「美玲、井上さんって、今はほかの誰かと付き合ってるの?」

「え、ああ……確かバスケ部の……あれ……そうすると……」


 柊は「うん」、と頷くと、


「今日の放課後、ちょっと話してみるよ」

「あ〜、もう、この子は。槻谷の時といい、何でもかんでも首を突っ込むんだから……」

「いや、傍から見てると、君たちは五十歩百歩だと思うけどな……」


 槻谷が的確すぎるツッコミを入れ、俺は賛同の意を表すために、「にゃあ」と一声泣いた

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