表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吾輩が、猫ですかっ?! ~幸せは猫とともに~  作者: 小山洋典
柊をぼっち飯から解放しよう!
18/52

6 西沢美玲の事情(推測)

「ししゃも~~」


 いつものように柊は俺を引っつかむと、ぎゅう、と押しつぶさんばかりにやや平坦な胸に抱え込み、グリグリと頬擦りしてくる。


「私、なんてことを……」


 何だ、また何かやらかしたのか?

 今日は予鈴がまったくもって空気を読まないタイミングで鳴って、絶望した俺は一足先に柊の家に帰り、ふて寝していたのだが。

 知るかよもう。

 ぼっち飯解放だかなんだか知らんが、二度も大チャンスを逃しやがった。

 もー無理! もー知らない!

 俺は流石にやさぐれていた。


「ししゃもう~~」

「ふみゃあ」


 あ〜、ウザったい。

 何やらかしたの、君?


「西沢にさ、ご飯誘われたんだ」


 ……え?

 なになに? また急展開あったの? 俺のサポートなしでもその領域にたどり着いた?

 もしかして、その申し出を受けるかどうかで悩んでるとか?

 チキンの柊のことだ、十分ありうる。


「友達にも紹介するから、明日一緒に昼ご飯食べよう、って」


 ふむふむ!

 それで? それで?


「だから私……」


 そうだよな、いきなり受けいれるのって、少し勇気いるかもしれないよな。

 でも安心しろ。俺が励ましてやる。元気づけてやるぞ。

 西沢の申し出を快く受けいれるんだ。


「はっきり断っちゃった」


 なんでだよおお!?

 お前なに? あらゆるフラグを折りまくる才能に開花しちゃったの?

 なんで受け入れないの? そんなに俺を猫にしたいわけ? 表出る?


「ふびゅ~」


 不満の声を上げる俺に、柊はぷう、と頬を膨らませる。

 俺の不機嫌さは、鳴き声の感じで理解したらしい。拗ねたように言い訳を始める。


「だってさ、西沢のやつ、とどのつまり『槻谷と関わらなければ、昼食一緒にしてあげる』みたいなこと言ってきたんだよ? そんなのムカつくじゃない? なんなの、その上から視線。何様のつもりなの?」


 うん、まあ、そう言われたら気持ちはわかる。

 でも相手が『あの西沢』なわけだから、柊が表現するより相当に婉曲的で、嫌味な言い方もしてないと思うんだが。

 柊も柊だ。お前、こんだけチキンかつ大都会でもロビンソンクルーソーやれるくらいのキング・オブ・ぼっちなのに、自覚ないの? そのロビンソンクルーソーにすら、フライデーがいたんだよ? 少しは譲歩して仲間に入れてもらったら?


「でも、あれは……なんでだったんだろう……?」


 難しい顔をして、柊が小首をかしげる。


「西沢、クラス委員だし、少し慌てさせようと思って、『誕生日になったら屋上に飛ぶらしいよ』って言ってやったら、真っ青になって、『あと二日しかないじゃない……』って……。あれだけ邪険にしときながらなんで誕生日まで把握してるのかな? それに……」


 柊は両手を伸ばして、目の高さに俺を持ち上げて、向かい合わせにする。

 あー、やだ。こういう扱い受けてると、自分が猫畜生なんだって思い知らされる。


「そもそも、なんで今日も旧校舎にいたのかだよ。西沢には全く関係ない場所じゃん? なんであいつのほうが先に屋上にいたの?」

「ふみゃあ(訳:知るかよ)」

「もしかして……。……あ!」

「みゅう(ああ、俺もそう思うよ)」

「西沢、実は槻谷に気があるのかな? だから逆に突き放しちゃう。話し方とか態度とか、槻谷の前だと、全く西沢らしくないしね……!」


 うん、その通り。短いやりとりしか見聞きしてないけど、その可能性は高いと思う。

 清純系と思わせつつ、結構ツンデレっぽいところがあるのかもしれないな。柊と同系統のような気がしないでもない。


「でも、そしたら、あんな態度をとられた槻谷の方は……」

「にゅう」

「……もしかして、本気で死ぬつもりになってるのかな……そうしたら、私……」


 ふいに、柊の口調が一気にトーンダウンした。

 ん? またなんか過去の傷に触れたのかな? っていうか柊、お前地雷持ちすぎだぞ。マインスイーパーで除去しようとしたら、初手から瞬殺されるレベル。


 柊は蒼白な顔で、俺を静かに床に下ろした。

 柊のトラウマ? だが、そんなこと俺の知ったことではない。

 少なくとも、今の段階では、だが。


 神の指令があってから、今日で三日か。

 残りの四日を使い、どうやって柊をぼっち飯から解放するべきか。

 なんだか、ぼっち飯なんかどうでもいいくらいきな臭くなってきたが、本当に大丈夫なのだろうか? 

 俺は密かにため息をついていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ